ぼっちくんと提督
時系列は、ぼっちくんと木村が付き合ったあとぐらい。
でもネタ自体はここ最近のネタ。
『提督が鎮守府に着任しました』
今日も俺はいつものように北海道から横須賀の駐屯地へとやってきた。もちろんパソコンの那珂…中だけど。ここ最近は、学校から帰ってきてからの提督ライフにも慣れてきて、任務をこなしては演習と出撃をこなしている。
秘書艦にはあざとい駆逐艦なんてものは設定せず、落ち着き払いまくっている加賀さんにTOP画面の3分の1を占領させている。
そんな加賀さんとともに提督ライフを送っていると、ちょっとした好奇心というかなんというか、願望的なものが生まれつつあった。
「俺も『提督』って呼んでもらいたい」
そう。『提督』。この響きがカッコイイ。
『総裁』『大佐』『隊長』『兵長』『コマンドー』など、どれも一度は呼んで欲しい階位である。
しかし実際には『提督』なんてものはそうそうなれるものではなく、きっと軍で訓練と実技と演習と勉強を重ねて、やっとこさなれるものなのだろう。あ、でも実技と演習は今やってるから大丈夫かも。免除してもらえるかしら?
とまぁそんな感じで、放置して資材を貯めている暇な時間に、リビングでテレビを見ていた弟の元へと参上した。
「あ、お兄ちゃん。どうしたの?」
「俺のことは兄と呼ぶでない。今度からは提督と呼んでくれ」
「……ん?」
「いや、だから提督って呼べ」
「てーとく? てーとくって何?」
「えっ? そこから?」
本気でわからないようで、真っ直ぐな瞳でこちらを見て首をかしげる弟。
その真っ直ぐな瞳で見られると、なんだか恥ずかしくなってくるもので、視線を逸らしてしまった。
「…いや、やっぱいいや」
「いいの?」
「いい。そのまま忘れてくれると助かる」
やはりまだ中学生の弟には『提督』という文字列は早すぎたか。時期早々だった。
「てーとくって何?」
「ググってこい」
「ぐぐってこい? どーゆー意味?」
「あーもうめんどくせぇな! 辞書で調べてこい! 辞典貸してやるから!」
そう言って電話機の横に置いてあった辞書を乱暴に渡して、リビングから脱出した。あれ以上あそこにいたらただの晒し者だ。ネットなら『無能乙』とか『にわか乙』とか言ってさらされているレベルの晒し者だ。
とにかく提督って呼んでもらうのはやめよう。うん。
次の日。
いつものように席に座ってボケーっと外を見ていた。
「ねぇ」
「おう」
そんな俺に木村が話しかけてきた。
なんかツンとしているが、どこか嬉しそうな顔をしているようにも見える。
そして原因を聞いてほしそうな一番めんどくさいタイプのかまってちゃんの顔だ。
俺は心の中でため息をついてから聞いた。
「えっと…木村?」
「木村じゃなくて、今度からは提督って呼んで」
俺、絶句。
「……ん? 早く」
ここで木村からの催促が入る。
俺は今度は木村にも聞こえるようにため息をついた。
「わかったよ。呼べばいいんだろ、呼べば」
そしてひと呼吸おいて言う。
「木村P」
「課金してないわよ!」
おしまい
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
無性にぼっちくんで書きたくなって書いてしまいました。
この似たものカップルはいつも仲良し。