4 私はナルシスト
あの後ぐっすり寝て、今日は普通に起きてます。頭のコブに手があたると、めちゃくちゃ痛いけど。まあ、元気。
初めて見る侍女が私の髪を整えてくれている。コリーナは私の今日のドレスを選んできますと出て行った。
「痛っ!!」
次女の手がコブにあたった。悶絶!
「も、も、申し訳ございません!」
侍女がブラシを取り落とし、平伏する。
「お許しください! 気をつけていたのですが、あたってしまいました!」
「あ、いいのよ、いいのよ。コブ大きいもの。次は気をつけてね?」
私があわてて次女に言う。
「!?」
侍女がびっくりして顔をあげ私を凝視した。
「あ、あの、許していただけるんですか?」
「? もちろんよ」
「あ、あ、ありがとうございますっ!」
侍女が泣き出した。なんでっ!?
そこにコリーナが戻ってきた。
「お、お前、何をしたんですっ! エリザベート様お許しください!」
すごい勢いで侍女を自分の背に隠した。
ええええええええ。
「コリーナ様、違います! エリザベート様が、エリザベート様が許してくださったんですぅ!」
涙ながらに侍女が叫ぶ。
「ええええっ?」
コリーナが驚く。
・・・・・・・うそーん。
「と、とにかく、後は私がしますから、お前はお下がり」
コリーナが侍女を追い出した。
「まずはおぐしを整えましょう」
髪をとかされながら、コリーナにおそるおそる今まで侍女が失敗したら私が何したか聞いてみた。
私はコリーナ以外の侍女にとっても厳しいらしい。
少しでもそそうしたら、水ぶっかけたり、一日中廊下に立たされたり、存在しないものを町に買いに行かせたり、下着姿にさせたり、、、、。ひ、ひどい。
でも、どうやら、貴族の中ではそうひどいほうではなく普通らしい。決して良い方でないけど、ひどくもないらしい。
ナントカ公爵令嬢は鞭打つらしいし、カントカ伯爵子息はメイドさんを無理矢理やっちゃってはポイらしい。
貴族、ひでえ。
「なのに、なのに、エリザベート様がお許しになるなんてっ!」
涙しながらコリーナが私の髪を結い上げている。
「まるで生まれ変わられたかのようですわ!」
ぎっくう。生まれ変わりじゃなく別人です。
ひどいことしろってか。・・・・・・・・。
無理無理無理無理。
それにしても、今鏡に自分が映ってるんだけど、ため息でるわー。絶世の美女と目があうんだけどさ。これ、本当に私の顔? きらっきらじゃん。実感ないわー。なんかめまいがしてきた。
「ねえ、コリーナ。頭動かしてもいい? 窓の方向いてもいいかしら?」
「おっ、お嬢様っ!? あんなに鏡を見るのが大好きで、半日でもご自分を眺めていた方がっ!」
きもっ! エリザベートきもっ!
「やはり打ち所が悪かったんじゃ、、、」
コリーナが真っ青になった。
「えっ? いえ、えーと。ま、まあ、いつまでもワガママ言ってじゃダメよねーとか、思ったりして。うーふふふ」
コリーナに笑いかけてみた
「そ、そうなんですか? い、今一良くわかりませんが、えーと、わかりました」
何がわかったんだろう、コリーナ。まあ、別人になったとは思いつかないよね。
それにしても、飛び込んだのが池だよ、池! せめて湖にしろっての。
「さあ、おぐしが結いあがりましたよ。後はドレスをお選びください」
パンパンとコリーナが手をたたく。
侍女が10人、ドレスをかかえながらゾロゾロと入ってきた。
きらっきらのハリウッド映画で見るようなドレス。さらに10人小物や靴を持って入ってきた。
うへあ。見るだけでおなかいっぱいです。
さらにコリーナがでかい箱をあけた。
うおおおおおっ?
キラキラキラキラキラっと宝石が光る。たくさん光ってるー!
「お嬢様が先日、旦那様におねだりしたチョーカーはまだ届いておりません。お許しくださいませ」
コリーナが平伏する。
まだ欲しいってか? エリザベート、強欲ってお前のことだろ。
「今日はどうされますか?」
ドレスを一生懸命上に持ち上げている侍女の腕がプルプルしてる。お、重そう。ごめんね。
「どれでもいいわ。コリーナ選んでちょうだい」
「ええええええっ!? ドレス選びにあれだけお時間をかけるお嬢様がっ? あれでもない、これでもないと、ドレスを30着は見るお嬢様がっ!? 頼んだものがすぐ届かないとかんしゃくを起こして侍女をぶつお嬢様がっ!?」
私もそうとうだけど、コリーナさんも負けてないよね、、、。
「今日の予定にあわせてコリーナが選んでちょうだい」
にっこりと笑ってみた。
「は、はいっ! それではこの藤色のドレスがよろしいかと思います」
考えてみれば、ここに持ってくる前にコリーナがいろいろ選んでくれてるんだろう。それで充分。
それにしても私って、すげー、ナルシスト。