2 私はまぬけ
パニックになりかけたけど、なんとか気を落ち着けて、話さないで聞き役に徹し、ひたすら情報収集中。
わかったことは、私の名前はエリザベート。伯爵の娘。
中年男性はお医者さんのクリス。
女性は私付の召使で、侍女か? 名前はコリーナ。亜麻色の髪のしっかり者のお嬢さんって感じ。
そして私は頭にでかいこぶができている。WHY?
さっきから気になっているのが、ここの文明レベル。
病人を診るって言うのに、聴診器も血圧計もない! ただ熱を手のひらではかって、口頭でやりとりするのみ。
しかも窓ガラスがなんか変。色が黄色っぽい。むかーし見た、築百年のわらぶき屋根の農家の窓にはまってるようなちゃっちそうなガラス。
こ、こ、これはっ! 中世へタイムスリップ? 異世界へワープっ? ってか外見が違うからジョブチェンジ!?
いやいやいや、落ち着け自分。まずは自分のこと思い出そう!
名前は西野真里。アラサー。彼氏なし、って、とてつもなく嫌なことに気がついた。
私はここにいる。じゃあ、元の私は?
この体の女性と入れ替わったとしたらいいんだけど、、、、最悪、私、死んでるんじゃ、、、、。
涙が出てきた。
「おっ、お嬢様!?」
コリーナがあわてて私の背中をなでる。クリス医師がゆっくり休めと部屋から出て行った。
「お嬢様、、、そんなに婚約者のアルベルト様がお嫌いなのですか、、、。どうしてもマルク様がよろしいのですね。」
こ、婚約者あ?
「旦那様がマルク様との事をお許しにならないからといって、許さないと死んでやると言って、池に身を投げるなんてっ!?」
ええ?
「頭に大きいコブができたぐらいでよかったのものの。池に落ちたお嬢様を見に行ったときは、息が止まっていて、私、私、お嬢様が亡くなってしまったかと・・・!」
えーと。
「しかも3日も意識が戻らなかったのに、マルク様は一度もお見舞いにいらっしゃいませんでしたのよ!?」
コリーナが泣き出した。
つまりー。
私には意にそまぬ婚約者アルベルトって人がいてー。
マルクって人が好きでー。
その人と結婚したいけど、父親に反対されていてー。
だから狂言自殺をはかって、池に飛び込んでー。
たぶん打ち所悪くて死んじゃってー。
なぜか私がエリザベートの中に入っちゃったーと。
すげー、まぬけ。