10 私は魔法使い、じゃない
「さあ、皆がそろった。食事をはじめよう」
お父様が執事っぽい人を見て言った。いや多分執事だな。
執事がドアを開けたら、ぞろぞろと召使いたちが入室してきた。
うおっ、映画みたい。
みんな銀のお盆を持って、その上に銀の、何て言うのかな、料理の上にかぶせる半円のカバー、それが乗ってる。
カバーを取って給仕をしてくれた。まずはお父様から。
何かなー。お腹すいたなー。
む、サラダか。ドレッシングは、、、ないな。みんなそのまま食べてる。
じゃあ一口。いただきます!
・・・・・びみょう。
えーと、塩水に野菜をひたして、水切りせずにちぎって出しましたって感じ。
びっしょびしょなんですけど。
「ビアンカ、どうしてこんな時間になったんだ」
あら、お父様がすこし不機嫌。
「遅くなってごめんなさい。学校の友人達と集まってたものだから」
学校? 私は家庭教師のロバート先生が何年も教えてくれてるのよね。
ってことは、学校に行ってないっぽい。お姉様だけ学校行ってるの? それとも私だけ?
「まだ学校の奴らとつるんでるのか? とっくに卒業してるのに、まだ入り浸ってるのか」
お兄様があきれた顔でお姉様を見た。卒業してるのに学校? 研究員とか?
「失礼ね。入り浸ってるんじゃないわよ。研究しに行ってるの! 教授のお手伝いもしてるし」
お、次は、スープか。
なんのスープかな。一見、ミネストローネっぽいな。
・・・・・しょっぱ! すげーしょっぱい。なんじゃこりゃー。
み、水。水ないぞ。あ、ワインか。
こんなの飲んだら高血圧でぶっ倒れそう。飲めねーよ。
えらいぶこつなトングでパンを配られた。
なんか黒っぽいよ? 黒パン?
・・・・・おいしくない。
ます固い。パンって噛めば噛むほど甘みがでるはずなのに、その甘みがない、、、、、。
食べるてと口の中の水分もってかれる。HPも一緒にもってかれてる感じなんですけど。
おっ! お肉きたー! メインディーッシュ!
さすがにこれはまずくしようがないだろう、と思ったら、お肉の上にソースをドドドドーっとかけられた。
なにこれ。色は赤いからベリー系のソース?
では、一口。
・・・・・・・・・ぐはあ。
香辛料入りすぎ。なんじゃこりゃあ。もうソースいらないっす。
お肉は塩こしょうでいいよ。とか言ったら大量にかけられそうだな。
こんな食事が続くの? ちょっと涙目。
お腹すいてるのに、食べる気しねー。
ああ、コンビニ行きたい。スーパーの値引きされた惣菜買いたい。
サンドイッチがパスタがピザが焼き飯が食べたい!
あ、餃子食べたくなっちゃった。
・・・・やめよう。考えるだけ無駄だ。
デザートに期待、したいけどちょっと怖い。
私が食事で悶絶してる間に、お姉様 VS 両親+お兄様といった構図で言い合いが始まっていた。
あらっ。雰囲気悪いわー。
はーと、お父様がため息をついた。
「お前は、いったい何をやってるんだ。魔術師にでもなる気か?」
・・・・・今なんて言いました? 魔術師?
「一緒に入学した貴族の娘達は、魔術の使い方を覚えたらさっさと学校をやめているだろう。魔力が少し高いからといって何だというのだ。お前もいい加減退学して夜会にでも出なさい」
魔力きたーーーーー!
ってことはここは異世界だ!
あっ! じゃあ、じゃあ、私にも魔力があるの?
ファイアって言ったら火を出せる?
「夜会なんて興味ないわ。私は学校に残りたいの! 夜会なんてエリザベートにまかせておけばいいでしょう!?」
ほほー。お姉様は魔法使いか。で、そこでなんて私の名前が出るわけ。
「エリザベートをバカにしてるけどさあ、ビアンカ、貴族としてはエリザベートは正しいぞ。お前がおかしいんだからな」
・・・・・お兄様、それかばってないから。どういう意味だよ。バカな方が貴族の娘らしいってか。
「あら、でも楽しそうじゃない。私も魔術を使ってみたいわよ?」
なーんて誘い水。私も魔法使える?
「はっ! 魔力ゼロのベスに使えるわけないでしょ!」
撃沈。
私は魔法使いじゃないのね。