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フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第三話

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変異する光

 白い光を掠めたデビルウルフは難なく倒すことができた。しかし、白い光自体に大きな変化が生まれる。


「最悪なパターンね……!」


 雪菜が皮肉気に呟く――優七もまた同意見だった。

 たゆたっていた白い光が周囲の空間を侵食するように一回り大きくなり、渦の流れが明らかに速くなった。これ以上に干渉すると、非常に危険だということはわかる。


「解析班が来るまですぐだろうけど……退避しておく?」


 優七が提案するが、それに反応したのは雪菜。


「いや、光がおかしな状況だとしたら、解析班の人でも調べられないんじゃない? それに反応があったということで消えるかもしれない――」


 言った直後、白い光の動きが鈍り始める。一時的なものだったのかと優七が考えたのも束の間、さらなる変化が目に入った。

 白い光が突如波打ち始める。その変化に優七達は慌てて武器を構え、


「何が起こるんだ……?」


 不安げに拓馬が呟いた。しかし優七や雪菜は何一つ答えることができず――白い光が収まるのを待つしかなく、

 そして次に、白い光の中から魔物が出現した。


「何……!?」


 優七が驚く間に優七達の目の前に現れたのは――漆黒の全身鎧に身を包んだ、狼頭の騎士。その頭部が鎧に準ずる漆黒の体毛で覆われているのを見て、優七は思わず叫んだ。


「ガイアウルフ……!?」


 魔王城手前、魔王軍幹部の城内を徘徊していた、上級モンスター。剣技しか使えないが、その身のこなしから多くの仲間を屠った厄介な魔物。


「どこからか転移してきたのか、それとも白い光が魔物を生成したのか……」


 雪菜は槍を握り締めながら呻くように呟いた。


「見て、まだ後方からも魔物が出てくる」


 雪菜の指摘に優七はガイアウルフの後方を注視。すると、今度は鬼のような顔を持ち、なおかつ大剣を持った緑の体躯をしたオーガ。


「ブレイドオーガか……あれ、魔王の森に潜んでいなかったか?」

「魔王の兵士というくくりだったはず……とりあえず、現れたのは二体ね」


 雪菜は目の前に現れた魔物を見ながら、目つきを鋭くした。


「何でこんな上級レベルの魔物が現れるのか知らないけど……それは倒してから考えよう。基本集団で襲い掛かってくる相手だから、上級でも私達なら十分勝てる」

「ああ……拓馬」

「わかっている……全力で行くぞ!」


 答えた瞬間、優七達はまず魔物達と距離を取る。それに反応したのはガイアウルフ――獣系の魔物でありながら騎士の能力を持つ変則的な魔物であり、動きも通常の騎士と比べ速い。


 ガイアウルフは真っ先に優七に狙いを定め、動いた。対する優七は剣を構えながら、魔物の後方に位置する白い光へ注目。魔物が出てきて以降渦は鳴りを潜め、デビルウルフが触れる前の様相を取り戻していた。


(ひとまずは大丈夫、か……?)


 胸中呟きながら、優七は近づくガイアウルフに対し視線を移す。右手にある剣は綺麗な白銀に加え赤い文様が施され、稀にドロップアイテムとして出てくると知っていた。


(レアアイテムで、専用魔法がいくつか使えるんだったっけ……)


 考える間にガイアウルフが接近。直情的な振り下ろしが優七を襲った。

 すかさず反応する優七。その一撃をスキルで受け流しつつ、一撃腹部に入れた。結果魔物は吠えたが、当然ながら仕留めるには至らない。


「来る……!」


 そこで雪菜が呟き、交戦する優七達の横をすり抜ける。ブレイドオーガが剣を振りかざしながら優七達へ突き進む姿。


「あっちは私が!」


 叫びながら彼女は地面に剣を突き立て結界を形成。それで食い止め、優七が仕留めたら協力して倒すという形に持っていきたいようだが――

 ブレイドオーガはまず剣を結界に叩き込んだ。途端に軋む音が生じ、雪菜の口から僅かながら苦悶の声が漏れる。


「おい、俺は――!」

「拓馬は優七を援護して倒す!」


 雪菜の指示に拓馬はすぐさま優七の方を向く。

 それと同時に優七はガイアウルフへさらなる一撃を叩き込むべく前に出る。


(HPはやや低めだったかな……けど剣技は強力だし、下手に大技を出して隙を作るより、細かい攻撃を加え隙を与えないようにしないと……)


 このレベルとなると連続攻撃を受ければ大幅にHPが削られる――そう頭の中で思いながら、優七は『クロスブレイド』を放った。熟練度が低いためまだ単純な二連撃だが、隙が生じることなく確実にダメージを与えられた。


「優七!」


 そこに拓馬が横手からガイアウルフへ斬りかかる。魔物は回避に移るが、反応に後れ剣戟をその身に受けた。


「これで――」


 優七はチャンスとばかりに間合いを詰め、剣を縦に薙いだ。それはガイアウルフへ見事入り、光となって消えた。

 倒した――優七は胸中呟きながら前方にいる雪菜達を見る。同時に結界が、ガラスの割れるような音と共に破砕し、雪菜は後方に下がる。


「倒したみたいね」


 雪菜は優七達の近くまで後退すると一つ呟く。


「残り一体だけど、慎重にいくわよ」

「了解……と」


 拓馬が応じた瞬間、またも白い光に異変。波打ち、さらに魔物が出現する。


「まだあるのか……しかも、またガイアウルフ」

「上級の魔物じゃなければ。もっと対処しやすいと思うんだけど……」


 優七の言葉に雪菜は愚痴を零すように応じつつ、槍の切っ先をブレイドオーガへと向けた。


「まあいいわ……とにかく、白い光を刺激しないようにいくわよ」

「わかっている――」


 優七が応じた直後、また白い光がゆらめく。どうやらまた魔物が出現する――と思った直後、ブレイドオーガが突進を仕掛けた。


「ふっ!」


 雪菜がそれを防ぐべく再度結界を構築。結果オーガは動きが止まり――そして、


「拓馬!」

「よっしゃ!」


 優七は名を呼ぶと同時にオーガへ接近。魔物は結界と衝突した影響で僅かに怯み、動きを止めた。同時に、雪菜が結界を解除する。


「――おおっ!」


 そして、優七はすくい上げるように斬撃を放った。大技である『グランドウェイブ』であり、ブレイドオーガが完全に体勢を立て直す前に、技が発動した。

 その連撃は、全て直撃する。けれどブレイドオーガは一矢報いようと剣を放った――が、それを拓馬が(さば)き、


「おらっ!」


 これで終わりとばかりに斬撃を見舞う。その刀身は炎に包まれ――優七は彼が炎属性を持つ単発技『フランベルジュ』を使用したのだと察した。

 剣がオーガに見事ヒットし、消滅。これで残るは新たに現れたガイアウルフと、先ほどゆらめいて出現したと思われるもう一体――


「……あれ?」


 優七は白い光の前にガイアウルフがいることを認めたが、もう一体の姿がどこにも見当たらないことで眉をひそめた。


「雪菜、もう一体いなかったか?」

「え……? 私はオーガに集中していて気付かなかったけど」

「拓馬――」

「俺も見ていないな」


 ならば気のせいなのか――けれど優七は大いに警戒し、周囲に目を向ける。

 だが、それ以上考える暇がなかった。残るガイアウルフが足を前に踏み出し――優七は臨戦態勢に入る。


「残る一体だけだけど……油断はしないように」

「当たり前だ」


 雪菜の警告に、拓馬は肩をすくめて応じる。優七は大丈夫なのかと一瞬不安になったが――考える間に魔物が迫る。

 白い光は元に戻っている。とはいえ先ほど魔物が出現したようにいつ何時現れるかわからない。だからこそ注意しながら――


「っ!?」


 その時、優七はガイアウルフ以外の気配を感じ取った――ゲームの世界が現実として現れ、ゲーム上の能力が優七に警告を発している――そこで、一つ気付いた。


(しまった……!)


 やはり魔物はいた。そして、その魔物がどこにいるのか、可能性に行き着いた。


「雪菜! 拓馬! 影だ!」


 途端優七は叫ぶ。それに反応した二人――同時に、

 雪菜の影が突如盛り上がり、人型の人形が姿を現す。


「ロストシャドウ……!」


 声を放ったのは拓馬――影を媒介とし、背後から強襲する魔物。これもまた上級モンスターだが、奇襲に気を付けていれば対処に難しくは無い。

 だが、この時優七は嫌な予感がした。ロストシャドウには二つの攻撃がある。一つは音もなく手刀を放つ『無音の暗殺』という技。そしてもう一つは風の力を用いた攻撃で――


「雪菜!」


 ガイアウルフが迫る中、優七は雪菜へ叫び、走る。そして、


 ロストシャドウの手に、風が巻き付き始めた。


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