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フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第三話

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彼の住む場所

 捜索を続けていた時、またも優七に通信が入った。けれど相手は江口ではなく、桜。何事かと思い映し出された映像には、桜と麻子。そして見慣れない男性が立っていた。


『優七君?』

「ああ……どうしたの? それと、横の人は……?」

『初めまして』


 優七が言及しようとした矢先、男性が先に声を上げた。それを聞きつけた雪菜と拓馬は、優七の横から画面を見る。


『浦津誠人といいます。プレイヤー名は、アースです』

「アース……ああ、デイクのパーティーにいた人か」


 優七は思い出しつつ、ゲーム上の姿を思い起こす。


「……へえ、こんな顔しているのね」


 名前を聞いた瞬間雪菜が声を上げ、感想を述べた。


「そして、ゲーム以上に胡散臭い感じね」

『……ははは』


 浦津は乾いた笑いを上げる。密かに優七もそう思っていたのだが、どうやら自覚があるらしい。


『ともかく、現在は君達と共に政府組織の中で戦っている身です。もし共に戦うことになれば……よろしくお願いします』


 そう言って頭を下げる浦津。丁寧な態度に優七もまた頭を下げ――やはりどこか胡散臭い雰囲気を持っているのだが、言わないことにした。

 次いで、今度は桜から質問がやってくる。


『で、そちらの方は?』


 彼女の目線は拓馬を射抜いている。優七は彼に視線を送りつつ、紹介を行う。


「野々矢拓馬。プレイヤー名はシェーグン」

『へえ……どうも、小河石桜といいます。プレイヤー名は――』

「いや、言わなくてもいいよ。顔がそのままじゃないか」


 言って、拓馬は笑みを浮かべた。


「そっちはマナだな……と、自己紹介はこのくらいにしよう。連絡ってどうしたんだ?」

「あんたが仕切らないでよ」


 雪菜が不満を述べた。けれど桜から答えが返って来る。


『それが……白い光のことを捜索することになって、報告のあった場所に赴いたの。で、その場所が優七君の住んでいる場所だったんだけど――』

「――なんだって!?」


 優七は驚き声を上げた。それに雪菜も同様の反応を示し、


「優七の住む場所か……ふむ、優七はそちらへ言った方が良いかもね」

「え、え……!?」


 優七は驚き、雪菜を見返す。


「俺が?」

「地元ってことは、多少なりとも地理はわかるでしょ? そういう人がいれば、桜達の仕事が楽になるでしょ?」

「こっちはどうするんだ?」


 質問は拓馬。雪菜はそれに肩をすくめ、


「敵は強くないし、山の地理も把握できたから、二人でも十分でしょ」

「それもそうか……」

「で、でも」


 そこへ、優七が雪菜達へ口を開く。


「俺は移り住んで間もないし、今だって家と学校の往復しかしてないし……」

『地元のプレイヤーに頼んだ方がよさそう?』


 桜の問いに、優七は小さく頷く。


「う、うん……そ、それと」

『それと?』

「……俺のことは、誰にも言わないでもらえるかな」


 優七の要求に、桜達は首を傾げた。


『言わないで欲しい?』

「その、俺がプレイヤーであることはクラスのみんなだって知っているけど……魔王と戦える能力ということを、誰にも話していないんだ」

「何よ、別にそのくらい喋ってもいいじゃない」


 雪菜が不満げに言う。すると、優七は首をブンブン振った。


「いや、あんまり目立ちたくないから……」

「英雄って言われるのが嫌だというのはわかるけど、レベルが高いことくらいは喋ってもいいんじゃないの?」

「既に学校にはプレイヤー同士の繋がりもあるし、変に波風立てたくないんだ」

「優七が出てくる程度で壊れるような関係なんて、必要ないと思うけど」


 乱暴な言い方をする雪菜。優七は勘弁してくれと思いながらさらに口を開こうとして、

 拓馬が笑い出した。


「……拓馬?」


「ああ、悪い……ほら、雪菜は不満なんじゃないか? ほら、やっぱり優七に活躍して欲しいんだろ――」


 そこまで言った時、雪菜の槍が拓馬へ放たれそうになった。慌てて彼は身を退き、


「冗談だって……でも、田舎だとしたら仕方ないんじゃないか?」


 すかさずフォローを入れた。


「高レベルプレイヤーの話なんて一度広まれば有名となり、心休まることもなくなってしまうと思う」

「……だよね」


 優七は心底同意しつつ拓馬へ言う。


「仲間内でリーダー格の人もいるから……さっきも言った通り、波風立てたくないんだ」

『……事情はわかった。なら、私達は私達で動くことにするよ』


 桜が言った――その時、麻子が桜の隣に割り込むように前に出た。


『ねえ優七君。一つ頼みがあるんだけど』

「……頼み?」

『もし良かったらでいいんだけど、地理を把握していて、なおかつ信頼できる人とかいない? 無闇やたらに人に訊くと無用な混乱を生み出すかもしれないからやらないけど、魔物が出現しそうな怪しい場所くらいは教えてもらわないと、時間が掛かるし』

『確かに、話すとなると口外しない人が良いでしょうね』


 浦津が賛同。それに優七は短く唸った。


「口外しない人……ってことは、政府関係者か俺の信頼できる人ってことだよね?」

『そうなるね』


 桜の答えに、優七は考え込む。候補はいる。少なからず信頼でき、なおかつ自分のことを理解してくれている人物。


「……その人はプレイヤーだけど、戦う職業じゃないから、戦闘には加われないよ」

『いいよいいよ。調査は私がやるから。で、誰なの?』


 桜の問い掛けに、優七は僅かに視線を逸らした。所作を見て桜は首を傾げ、拓馬や雪菜は訝しげな視線を送る。


「どうしたのよ?」

「……いや、こういう形で関わるとは思っていなくて」


 優七の言葉に、この場にいる誰もが理解できず無言となる。


『で、優七君が思い浮かべている人物は?』


 再度桜が問う。それに優七は、ようやく声を上げた。


「……俺の叔母さん」

『……叔母?』


 桜が聞き返した瞬間、優七は小さく頷いた。


「後で聞いたんだけど、プレイヤーだったんだよ。前線に立つことのない薬師だけど」

『なるほど……親族になるわけだから信用できるね』

「俺の父さんの弟の奥さんだから血縁関係はないけどね……今から住所を教えるよ」

「わかった」


 ――ということで、優七は桜達へ家の住所を伝達。なおかつ家の電話番号などを伝え、


「俺から話は通しておくから」

『うん、わかった』


 桜の言葉と共に、通信を切る。

 すかさず優七は電話を行う。コール音三回で叔母である利奈が出て、一連の事情を説明。


『わかった。こっちは任せておいて』


 電話の奥で笑みを浮かべていること間違いなしの彼女に、優七は「お願い」と言った後、電話を切った。

 そして次の瞬間、拓馬が声を上げる。


「いきなりの展開で驚いたな……優七、白い光について心当たりとかはなかったのか?」

「聞き覚えがまったくないよ……まだ噂が広まっていなかったのか、それとも……」

「どちらにせよ、後は任せましょ」


 雪菜は答えると、移動を再開するべく槍を肩に担いだ。


「もう一度山を見回ることにしましょう……二人とも、それでいい?」

「俺はいいよ」


 拓馬が賛同。優七も頷き、移動を開始。

 その途中、優七は僅かながら不安を覚えた。自分の近しい場所――クラスメイトのプレイヤーなどに影響はないだろうか。


(桜さん達が無茶な行動を起こすはずがないし……巻き込まれるとしたら、経験値稼ぎに行っている人だな……この山でいなくなった人のように)


 優七の住む場所の周辺も、この山と同様それほど魔物のレベルが高くない。だからこそ多くのプレイヤーが侵入するし、学校内でもそうした話が出ている。

 本来ならば、警告しないところだが――優七自身素性を一切話していないため、気が退けた。


 そしてその中で一番の懸念として浮かんだのは、常日頃接してくる二宮の存在。


(正義感が強いから、白い光を見たなら自分でどうにかしないと、という風に思うかもしれないな)


 そうならないことを祈る――優七は胸中呟きながら、雪菜や拓馬と共に歩き続けた。


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