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フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第三話

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訪れた場所

新しい話のプロローグということで短めです。

 訪れた場所は、影名から見れば恐ろしい程堅牢で、豪華な場所だった。


「……ごめん、予想以上だった」


 牛谷が運転する車の助手席で、影名は門を見据えながら呟いた。


「当然だろうな」


 牛谷が応じた時、正面にある黒の鉄門が自動的に開いた。

 中は舗装された道と、横に駐車場。牛谷は車を操作しそこへ停車させると、エンジンを切った。


「行くぞ」

「ええ……」


 影名は促され車から降りる。足が地面に触れた時、小さくため息さえつきながら、


「さむ……」


 肩を震わせつつ車を出て、扉を閉めた。そして、


「牛谷、早く行こう。寒い……というか」


 影名は周囲、一面の銀世界を見ながら呟いた。


「まさかこんなところに来るとは思わなかった」

「だろうな。ほら、行くぞ」


 牛谷が先導して歩き始める。影名は白い息を出しながら、彼の歩く後を追い始めた。

 空は太陽が出ているのだが、周囲にある木々や地面は全て白い。天気情報を見ていたところ昨日までは雪が降っていたとのことなので、それが原因であるのは明白だった。


「しっかし、この景色といいこの屋敷といい……すごいコネ持ってるわね」


 影名は零しながら――正面に見える西洋風の屋敷を見て呟いた。


「言っておくが、大したことではない。この屋敷の主が開発現場に興味があり、覗きに来た時親交を持っただけだ」

「……縁というのは、どういう結びつきをするかわからないものね」

「そうだな」


 端的に牛谷が返答した時、ふいに屋敷玄関が開いた。中からは、黒いスーツを着た男性が一人。


「見ようによっては執事ね。SPか何か?」

「ああ。鍵長(かぎなが)さんだ」


 影名の問いに牛谷は応じ、彼に向かって会釈をした。

 合わせて相手も会釈をする。影名が見た所年齢は三十代半ば。ムースできっちりと整えられた髪と綺麗な姿勢を持ったその人物は、潔癖そうな印象を与えるに十分だった。


「どうも、牛谷さん」


 二人が近づくと鍵長が声を上げる。太く、勇壮な声。


「お一人の予定だったはずでしたが……彼女は?」

「指示を受けて見捨てようとした一人です。私の動きを察知したらしく」

「……ほう」


 興味を示したのか、彼は影名に目を移す。


「そうですか。そういう事情でしたら大丈夫かと思います……が、念の為ご報告します」

「はい。現在は、どうされているのですか?」

「主ですか? 部屋でお休みになられています」

「わかりました。私達はどうすれば?」

「リビングでお待ちください。では、ご案内します」


 彼は言うと、中へ二人を通した。

 洋館風の建物の中は、内装も外観通り。ファンタジー世界と異なり全てが電気照明であったが、赤い絨毯が敷かれた廊下に玄関ホール。影名は思わず声を上げそうになった。


(この建物自体が、ゲーム上で出てきそうな雰囲気ね)


「こちらへ」


 影名が胸中思っていると鍵長が廊下を示す。二人はそれに従い先へ進み、


「そういえば、主が仰っていましたよ。また問題を見つけたそうです」

「問題、ですか」

「ええ」


 出た話題に牛谷が会話をこなす。そこで影名は首を傾げた。


「問題?」

「……この屋敷の主は情報が早くてね。一体どこから探って来るのかわからないが、色々と噂を仕入れて来るんだよ」


 牛谷の解説に影名は「ふうん」と相槌を打った。

 手のひらを返せば、それだけロスト・フロンティアにのめり込んでいるということだろう。ましてや現実世界と融合した状況下でそれだとすると、彼は現実と仮想の区別がついていないのではないのか――


「どのような問題ですか?」


 牛谷が鍵長に尋ねる。彼は小さく肩をすくめると、答えを提示した。


「何でもここ最近、システムのバグなのか至る所に白い光の塊が出現するそうです。現れる場所はランダムな上、厄介な力も有しているとのこと。おそらくあなた方がシステム解析をした結果、生じたことなのかもしれません」

「厄介な力とは?」


 牛谷は問う。鍵長は牛谷達を一瞥した後微笑み、楽しむように告げた。


「これはあくまで噂ですが……その白い光に飲み込まれると、二度とこの世界に戻ってこられないのでは、とのことです――」

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