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フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第五話

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光と覚悟

 ダクスを倒し、屋敷を出て優七が上空を見上げた時、凄まじい光を放つ球体を視界に捉えた。


「あれは……!?」

「今牛谷って人から聞き取り中みたいね」


 雪菜が近寄ってきて優七へ語る。


「観念したのか、それとも策が成功したからか、喋るつもりみたい……ダクスが言っていた選択を、私達がすることになりそう」

「選択……」

「この世界を……『ロスト・フロンティア』の世界を、どうするべきか」


 あまりにも急な問い掛け。優七は光を見上げ呆然とするしかない。

 やがて、聞き取りを終えた江口が近づいてくる。誰もが固唾をのむ中、彼は話し始めた。


「あの光が、『ロストフロンティア』のシステムを具現化したもの、らしい」

「消す方法はないの?」


 雪菜の質問に、江口は難しい顔をした。


「現在直原君達に連絡をして調べてもらっているが――」


 その時、江口に通信が。どうやら麻子かららしい。


『江口さん、お疲れ様です』

「用件は?」

『出現した光についてです……手短に言います。あの光はおそらく数時間以内に消滅します』


 消滅――それで終わりならありがたいが、どうやらそうではないらしい。


『光が消えると同時、システムがどうなるかはわかりません。どうやらシステムの干渉権限を無理矢理引っ張り出しているみたいで、それが消滅すると最悪データそのものが消える可能性が……』

「そうなると、今具現化しているシステムにも被害が出る、というわけか」

『そうかもしれません……光の中ですが、魔物を使役したプレイヤーからの映像を解析した結果、どうやらゲーム世界が広がっているようです』

「ルームなどと同じように、か?」

『はい。その奥に、システムを干渉できる場所があるようですね』

「そのポイントは? 距離があるのか?」

『そう遠くありません……その場所は、王都ですから』


 ――ロストフロンティアにはいくつも町が存在するが、その中で王都と呼ばれるものは一つしかない。

 王都メークレッジ――全プレイヤーがキャラを作成した後に赴く始まりの町から魔物を倒し進み、到着するゲーム世界の中心地。


『その城内にシステムは存在します……それで、あまりにも緊急であり政府側もどう対応すべきか迷っているようです』

「当然だろうな。だがもう数時間しかない」


 どうにかしなければならない――沈黙する中で、


「この無茶苦茶な世界を、そのままにしておくのは駄目だと思う」


 意を決したように、桜が口を開いた。


「選択肢……首謀者の言うことをそのまま信じるわけにはいかないと思うけど、やれるのなら、今のような状況を改善したい」

「確かに、そうだな」


 近くにいた拓馬が同意する。


「でもさ、そうなると現実世界とゲームの世界を分離するんだよな? そこで何か問題は起きないのかな?」

「――どういう選択をするにしろ、賭けには違いない」


 江口の発言。優七は心の中で同意する。


「今まで起こった出来事が全て未知ならば、システムに干渉した際どうなるかも未知だ……本来なら私達にそれを決める権限はない。だが、この場で決めなければそれこそ世界がどうなるかわからない」

「ま、やるしかないんじゃない?」


 雪菜が軽い口調で語った。その態度に優七は少し驚き、


「ずいぶん軽いな」

「重く受け止めて、ここで俯いても仕方がないってことよ」

「うん、その通りだ……しかし、この場にいる全員で動くのもリスクがある」


 江口はそう語り、この場にいるプレイヤー達に視線を送った。


「あの光の中がゲームの世界に存在する始まりの町だとしたら、危険はない。だがあそこへ入り込みトラブルが起きる可能性は十二分に考えられる。それに、ダクス達がまた何かやり出さないとも限らない。よって」


 江口は一拍おき、


「少人数で向かおうと思う……私は行くが、指定はしない。どうなるかわからない状況だ。私のような政府関係のプレイヤーが来るのを待っても――」

「行きます」


 優七は手を上げた。それに江口を他のプレイヤー達は驚く。


「今回の戦い、俺は最初から関わってました……だから、最後までやり遂げます」


 それと同時に、暴走した友人のことを思い出す――ああなった原因は、ダクス達にある。だから、優七としては彼らのやったことを、この手で打ち砕きたかった。


「……いいんだな?」

「はい」

「なら、付き合うよ」


 桜が続く。それに雪菜もまた手を上げた。


「私もやるわ。足手まといになることはないだろうし、心配しないで」

「四人か……いいだろう。このメンバーで行く。他の者は後から来る政府関係者の指示に従ってくれ」


 そう言って江口は何やら操作を始めた。


「さて、ルームなども混乱しているはずだ……RIN君など、有名人プレイヤーに声を掛け、事態の収拾もやらなければ」


 そうして彼は指示を出し、優七達へ向き直る。


「もう一度聞くが、覚悟はいいんだな?」

「はい」

「大丈夫です」

「当然よ」


 優七達が相次いで答えると、江口は笑った。


「頼もしい限りだな……では、行こう」


 優七達は、上空に存在する光へ向かって移動を始める。用いるのは他のプレイヤーが使役する竜型の魔物。地面からどんどん離れていくことに優七は多少ながら恐怖を覚えたが、眼前に迫る光を見て自身を奮い立たせる。

 雪菜や桜はどうか――優七が顔を覗き見ると、桜は空を見上げ決意を秘めた顔をしており、一方の雪菜とは目が合った。


「……雪菜、どうした?」

「別に」


 そっぽを向く。すると前にいる江口の肩が震えた。笑っているらしい。


「江口さん?」

「いや、何でもない」


 ――このやりとり、以前にもやったと優七はなんとなく思う。


 次いで再び雪菜と目を合わせる。彼女が記憶を失い、優七は一つ決意をした。今この場でさすがに言うことはできないが、戦いが終わった後――


「私は」


 雪菜は目を離さず告げる。


「別に言わなくてもいいから」

「……何も言ってないけど」

「優七が考えていることなんてお見通しだよ」


 その時、桜の視線を感じそちらを向く。

 彼女は微笑を浮かべ、小さく頷いた。彼女については任せろ――そんな風に語っている気がした。


「さて、到着するぞ」


 江口が言う。それと共に全員が顔を引き締め――光の中へ飛び込んだ。


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