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フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第五話

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三つの選択肢

「この世界に理不尽に現れた『ロスト・フロンティア』の世界。そのシステムに干渉できるという可能性だ。それをできるようにするために、様々な実験を行った」

「実験ならば、政府と連携し行動すればよかった。犠牲者すら現れるような無謀な実験を起こしたのは、他に理由があるからだろう?」


 江口の言葉には敵意が満ちている。ダクスは笑みで応じた。紛れもない肯定の笑みだ。


「そうだな……とはいえ、興味がある話ではあるだろう?」

「牛谷がいるため、あなた達はより深くシステムに干渉できるとでも言いたいのか?」

「そうだな。だが検証の結果、限界があることもわかった」


 限界――優七が何なのか疑問に思った時、ダクスから答えが明示された。


「ゲームのプログラムが突如現実として具現化した世界……極めて理不尽であり、事件が発生する前の常識を打ち破る出来事であった。しかし、今はただ現実にそうしたシステムが不安定ながら存在しているにすぎず、いつか崩壊してしまう可能性だってある」

「崩壊、だと?」

「そうだ。もしそうなってしまったら……どうなるかわからん。単にプログラムそのものが消えるだけで済む話なのか、それともこの世界に大きな影響を及ぼすことになるのか……答えはわからん。しかし、政府としても野放しにしておけないという結論に至るはずだ」

「それを是正しよう、などと思ったのか?」

「是正、か。君の言葉だけを捉えるなら善意でやっているように聞こえるが、当然ここには打算もある」


 ダクスは平然と語る――優七は剣を握り締める力を一層強くした。このまま攻撃して――という考えが浮かんだが、ダクスには一切の隙がないように見える。


「不安定な状況。謎の白い光といった現象が生じるのもその一つと言える。これを解決するには三通りのやり方がある。一つはシステムに干渉し、安定的に作動するようメンテナンスを行うこと」

「だが、それはできない」

「その通りだ。さっきも言ったが、干渉できるシステムには限界があった。これは真下蒼月が所持していた権限なども関係している」

「つまり、彼の権限が必要だと?」

「そうだ。しかし、それを取り払う方法が存在する……残る二つだ」


 ダクスはどこまでも面白そうに語る。


「一つはこの世界とプログラム世界を分離する。どういう結果になるのかわからないが、可能性としては現実世界とは別に、プログラム世界が共存するということになると思われる。これは権限などを上書きしてのことだ。つまり、完全にシステムを掌握できる。そして、もう一つ」


 江口を見据え、ダクスは続ける。


「この世界に不安定的に存在しているプログラム世界を……完全に現実世界と融合させる」

「何……?」

「方法はあるのだよ。それがアップデートだ。現在のシステムに上書きするような形にすれば、権限を奪取した状態で世界改変を行える」

「それが、お前達の目的か?」

「いかにも」


 ダクスは頷く。


「現状のままではまずい、と政府も思っているだろう? 私達が独自にやろうとしていたのは、君達からしたら不都合であることに変わりはない。しかし、至る結論は私と同じになる。三つの選択肢……そこから選び取ることになる」

「少なくとも、融合なんて真似はさせないさ」


 江口が決然と言い放つ。優七も内心同意だった。

 融合――それは即ち、事件のような魔物が跋扈する世界ではないのか。


「そう言うと思っていたよ」


 対するダクスは想定内だったのか、肩をすくめた。


「この点において、私と君達がわかり合えることは決してないだろう。ならば決めるしかないな。この場において、どちらが選択を有することができるのか」

「……何でここまで話すんだ?」


 プレイヤーの誰かが問うた。するとダクスは、笑った。奇怪な、それでいて子供のような笑み。


「知ってもらいたかったのだよ。この場の責任者はそこの政府関係者だろう? おそらくこの戦いに勝利したとしても、先ほどの選択をすることになる」

「何をした?」


 江口は尋ねるが、ダクスはそれ以上問答する気はないようだった。


「伝えたいことは終わった。ここからは――決戦だ」


 突如、優七の目の前に画面が出現する。デュエルを受諾するかという選択肢だった。


「私はプレイヤーキラーになるのは避けたいからね、デュエルという形で戦わせてもらう。君達が受諾しやすいように、HPがゼロになれば強制武装解除に留めてある」

「戦いに勝とうが負けようが、お前の結末は変わらんぞ」

「その後のことなど私は興味がない……いや、意味がないとでも言うべきか」


 何を――優七が声を上げようとした矢先だった。


 突如、メニュー画面に変化が起きる。一瞬コマンドウインドウが真っ黒になった。

 それに驚き画面を見た矢先、画面にはデュエル受諾の表示が成されていた。


「このくらいのことはできるさ。それでは皆、始めようか」


 重い腰を上げるかのように、ダクスは立ち上がる。その手には――刀。


「システムを利用した強制介入に加え、新たな武器だ。まさかこちらが策もなしに招いたとは思わなかっただろう?」

「にしても、まさか正攻法だとは考えてもみなかったさ」


 江口が応じるべく武器を構え――次いで、書斎の周囲に突如魔法陣が浮かび上がる。


「これも、システム介入か?」

「そうだ。エンカウントポイントを意図的に操作したものになる」

「何から何まで無茶苦茶だな……まあいい」


 江口は、容赦なくダクスへ向け――告げた。


「ここでお前達の企みも終わりだ。決着をつける」


 そうして、戦闘が始まった。


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