表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第五話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/137

決戦へ

 ふいに始まった最終決戦へ向けての準備。ただ相手がどういった力量を持っているかまったくわからない以上、非常に緊迫した戦いになるのは間違いない。


「優七君」


 そんな折、桜が優七を呼ぶ。


「ちょっと話、いいかな?」

「……うん」


 頷いた優七は桜と共に歩き出し、ルーム内の湖へ。

 どこまでも変わらない湖面を見据え、桜は語り始める。


「その、なんだか色々あって、戦いに入るわけだけど……」

「あ、うん」


 優七は思わず苦笑する――話の展開があまりの方向に進んでしまったためデート云々の記憶が飛んでしまっていた。


「また、改めてということでいいかな?」

「うん」


 頷く優七。視線を合わせると、桜は笑う。


「なんというか、最初の戦いが終わってこうしてきちんと話せる機会もすごく少なくなってしまったね」

「そうだね……」

「でも、私達はこのゲームの世界で繋がっているのも、また事実だと思うの」


 優七も頷く。それもまた、納得がいかない面もあるが、事実だ。


「そして、こんなふざけた世界に至ってしまった中で、さらに事件を引き起こそうとする人物がいる。絶対に止めないといけない」

「この戦いが、区切りになるのかな」


 優七はふいに疑問を零す。長い戦い。最初の大事件から、ずっと魔物と向かい続けた。魔物が消える可能性は現状低い。けれど、この世界に大きく干渉する存在を、今回の戦いで排除できるかもしれない。


「その可能性は、十分あると思う。頑張らないと」

「そうだね……でも」

「でも?」

「桜さんとなら、勝てると思う」


 最初の事件を振り返る。苦しい戦いだった。けれどその中で、優七は仲間達との絆を確認することができた。

 悲劇が契機という部分では複雑な思いもあった。しかし、あの戦いを通し桜などと親しくなれたのもまた事実。


「うん、私もそう思う」


 笑みを浮かべる桜。優七はそれに笑みで応じ、


「……戦いが終わったら、打ち上げでもしたいな」

「打ち上げか。ゲーム的に言えば宴かな?」

「そうかもしれない……できるかな?」

「いいんじゃないかな。みんなを労う意味もあると思うから」


 桜はそう語ると、湖面を見据えた。


「……最初の事件の時も、こうやって話をしたね」


 ふいに語りだした桜に対し、優七はぎこちなく頷く、


「う、うん」

「あの時から、まだ数ヶ月しか経っていないんだと思うと……なんだか、信じられないな」


 優七も同意するように頷く。


「あの事件がまるで遠いことのように思える……あっという間だったようにも思えるし、途轍もなく長いようにも思える」

「俺も、そう思う」


 優七の返答に、桜は首を向ける。


「……ごめん、なんだか辛気臭くなっちゃった」

「いや、大丈夫だよ」


 と、ここで互いに目を合わせる。しばし沈黙し、やがて――


「……城藤さんのこと、気にしてる?」

「え、いや、その――」


 狼狽える優七に対し、突如桜は破顔する。


「ごめん、詰問するようなことしちゃって」

「い、いや……あの……」

「その辺りの話を今言うつもりはないよ。それに」


 桜は、優しげな笑みを見せた。


「優七君には、ゆっくりと考えて欲しいから」

「桜さん……」

「私は優七君が好きなのは変わらないよ。でも、優七君がそうじゃなくなったら、私は身を退くべきだと思ってる」

「それは……」

「優七君は一人なんだから、優七君の隣にいることができる人だって一人しかいないの。だから……急がずゆっくりと考えて欲しいな。私は、どういう結論になったとしても従うから」


 優七の口が止まる。彼女の言動は、全て優七自身のことを慮ってのことだった。


「けど、一つだけ約束して。絶対、優七君が後悔しないようにすること。いい?」

「……うん」


 それだけは、はっきりと頷いた。

 桜は納得したように「よし」と声を上げ、


「なら、この話はこれで終わり。戦いに向け気合を入れ直そう」

「うん」


 頷き二人は立ち上がる――それと共に、優七は一つ決心する。


 自分がどういう結論に達するか。それは自身もよくわかっていない。けれど、絶対に桜との約束は守る事。そして、あの事件で誓ったように、絶対に彼女を守る。


 そう固く決意し、優七は歩き始めた。






 牛谷達が潜伏している場所の近く。時間としては夕方手前くらいに、優七達は下り立った。

 繁華街、というにはやや規模が小さい街並みだが、それでも休日ということもあって人通りは多い。


「さて……」


 同行する守山が周囲を見回すと、


「いたな……野々矢君」


 優七は視線を投げる。事前に来ていたらしい、制服姿の拓馬が近づいてきた。


「お疲れ様です」

「お疲れ様……協力感謝する」

「いえ……あの、他の方々は?」

「有名人の方々は別所にいる。下手に目立って大騒ぎされても困るからな。この町の中にいるのは間違いないよ。それで――」

「はい、敵の居所ですよね」


 拓馬はすぐさまメニューを開きスキルを使用。彼の『千里眼』を用いた結果――


「プレイヤーがいるな」

「はい。ここから多少なりとも距離はありますけど……その周囲には魔物も」

「配置的には道路などを監視しているということか。駅周辺を出ると、おそらく露見してしまうだろう。場合によってはルームなどを使用し逃げるわけだが……」


 と、守山はじっと画面を見続ける。


「プレイヤーを示すアイコンは全部で四つか。牛谷以外の人物達だな」

「協力者、ということですよね?」


 優七が問うと、守山は頷いた。


「場所的には別荘が存在する。牛谷のことをかくまっている人物なんだろうが……しかし、なぜこうまで彼らを助けるのか、疑問だな」


 と、ここで彼は息をついた。


「まあいい……その辺りの解明は後にしよう。動きがないということは、相手もこちらには気付いていないということ。プレイヤー達が全員集合するまで待とう」


 集合した瞬間、戦いが始まる……優七の体に緊張が駆け抜ける。


 この戦いで、全てが解決するとは思えない。とはいえこの戦いで区切りがつくのは間違いない。


「プレイヤーではない人物が町に張り付いているという可能性もゼロではないが……今のところ動きがないところを見ると、その可能性は低そうだな」


 守山がなおも呟いた時、後方から人の気配。振り返ると、複数人のプレイヤー達。


「よし……RIN君も既に準備は整ったと言っていた。これで攻撃できる準備は整った」


 守山はそう告げると、麻子へ連絡を行う。


「今から……ルームの出入りを禁止してくれ」


 それからいくつか会話が交わされ、そして、


「――準備できた」


 優七は確認のためにルームに入れるかどうか確認。すると、エラー処理が出て一時的に入場できないという報告が。


「行くぞ」


 江口が告げる。それと共に――優七達は速やかに移動を開始した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ