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フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第五話

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決戦準備

 ――二宮と共に行動していた人物の詳細が判明した直後、江口の上司である守山は一つの決断を下した。


「彼以外にも十中八九内通者がいるのは間違いない。彼らに情報が行き渡る前に、先手をとる……責任は全て私が持とう」


 英断を下し、牛谷の居所を襲撃する準備を始める。


「プレイヤー達についても、ある程度信用における人物しか動けないな」

「上の人と知り合いのプレイヤーもいますからね……」


 場所は優七達のルーム。報告を受けた江口が守山へ報告し、この時点ではまだ他の政府関係者については連絡していないとのこと。

 この場にいるのは二人に加え優七と桜。RINに雪菜と、麻子。


「……とはいえ、プレイヤー達が集結しても、非常に難しいだろうな」


 守山は息をつく。優七にもそれは理解できていた。

 牛谷は魔物を使役する。当然拠点となっている場所にも魔物を張り巡らせていることだろう。となれば、攻撃を仕掛ける前に見つかるのは明白。


「彼らが利用していたルームについては封鎖措置をとっているため、そういう意味で逃げ場はない。とはいえ、彼らの居所は……」


 守山はコートのポケットからメモを取り出す。牛谷などのIDは把握していたため、占い師を利用し居所をつかむことができた。


「その場所とは?」


 桜が問う。すると彼はメモを差し出した。


「……ここは」

「軽井沢などと同様、別荘も多く避暑地として知られる場所だ。現在はおそらく、雪が積もっているだろう」


 別荘地――となれば当然、牛谷達をかくまっているのはそうした資金を持っている人物ということになる。


「人がそれほどいない場所であるため、多くのプレイヤーが集えば当然警戒するだろう。奇襲を仕掛けるにはできるだけ接近する必要があるのだが、それが難しい状況にある」

「他に逃げ場所がある可能性も……」

「そうだ。まだルームを所持していて、そこに逃げ込む可能性もゼロではない。今回牛谷の居所はつかんだが、それで捕まえられるかどうかは未知数……いや、確立としては低いのでは、と私は思っている」


 だが、できればここで――逃げる手段は優七でも数々思い浮かぶ。そうした中で奇襲が成功するとは思えない。


「別荘地に隠れているというのは紛れもない事実。できればここでどうにかして――」

「守山さん」


 ここで声を発したのは、麻子だった。


「手がないこともないです」

「……直原君?」

「ただし、これはすぐに敵に気付かれる上、実行することによって混乱が生じます。それに二度と同じ手法は使えない。今回の戦いで全てを決するつもりでなければ、使えません」

「どういう手段だ?」


 問い掛ける守山に、麻子は目を合わせながら答える。


「……一時的に、ルームから出入りを封じます」


 出入りを――封じる。その言葉に守山は驚いた表情を見せる。


「システムに干渉できるのか?」

「はい。一度実験で試してみたんですが、ルームの出入りをオンオフと設定することができます。ただしこれは一度やれば相手にもわかるでしょうから、もし逃げられてしまえば対策を講じられる可能性もあります」

「そして、混乱もあると」


 江口が言う。麻子は首肯し、


「どのルームが牛谷達と関わっているのかまったくわからない以上、全てを封鎖するしかないでしょう。となれば当然、混乱が生じます」

「それを独断でやった場合……最悪私のクビが飛ぶな」


 守山が言う。優七は表情を硬くして、江口も険しい顔を見せる。


「だが、やらなければならない。相手の目的と思しきアップデートをされてしまうと、どうなるかわからない」

「はい……ただ私は作業をするので、おそらく戦いには参加できません」

「それはわかっている。できるだけ人数を集めたいところだが、情報が漏れる可能性を考えると厳しいな」


 難しい顔をして語る守山。優七としても内心同意だった。


 敵の戦力が少数であるのは間違いないだろう。しかし、それでも高レベルのプレイヤーが存在していることを踏まえると――


「まず、相手の状況を探ることから始めないといけない」


 守山が言う。彼は腕組みをしてなおも続ける。


「特に、敵がどの程度いるのか……ルームを利用し最寄りの駅周辺に近づくことは可能だ。そこからできれば数などを特定したいが――」

「スキル『千里眼』を持つ人間ならどうですか? その人物は信用できますし」


 優七が発言。それに桜などプレイヤーが反応する。


「え、『千里眼』?」

「野々矢拓馬……プレイヤー名シェーグンと以前出会いました。彼なら、もしかすると調べられるかもしれません」

「なるほど、スキルを活用し敵の数を把握するのか」

「はい。おそらく牛谷という人は使役する魔物を周囲に展開して警備に当たらせているはず。ですが、目立つように配置すれば混乱が起きますし、何より見つかる元になる。だから警備をさせるにしても駅周辺のような市街地は無理だと思うんです」

「それには同意する。ならばスキルを利用し……けれど、人選はどうするべきか」

「今から召集をかけて、どれくらい集まりますか?」

「敵に勘付かれないようにするため、となるとかなり厳しいな。多くて十人程度か」

「敵は少数である以上、この場にいる面々だけでも十分戦えるとは思いますが……」

「スキルを扱える野々矢君に加え、江口などがいるか……大々的に戦力を集めるとなると、厳しいな」

「尾野田さんとかにも声を掛けましょうか」


 RINが言う――尾野田宗一。プレイヤー名エルドーというゲーム内での有名人。彼もまた実力者の一人で、呼び掛ければ参加してもらえるだろう。


「敵に気付かれないよう連絡をとることは可能ですから」

「彼か……うん、戦力としても申し分ないな」

「彼の呼びかけで集まってくれる人もいるでしょうけど」

「わかった。できるだけ迅速かつ、内密に頼む」

「はい。私も協力します」


 RINの言葉――正直、優七としてはこれ以上ないくらいに心強い。


「あ、あの」


 そこで次に声を上げたのは雪菜。


「わ、私は……」


 守山としては、微妙なところだろう。レベル的が相当高いのは間違いない。けれど、記憶を失っているという現状を鑑みれば、無理をさせるべきではない。

 どうするのか――優七が見守っていると、雪菜はさらに発言した。


「どういう形であっても……その、協力したいんです」

「……わかった」


 守山は同意。大丈夫なのかと優七は不安に思ったが、固い意志が伴っているのを感じ取り、何も言えなかった。


「ただ、状況がどのようになるかわからない戦いだ。城藤君には後方支援を担当してもらいたい」

「はい」

「長谷君と共に行動してもらうとしよう……直原さん、ルームの閉鎖についてはどのくらい時間が掛かる?」

「システムをどういじればいいかわかっているので、五分もあればできます」

「そうか。人を集める時間を考慮すると……一時間後、行動を開始しよう。本来ならばどこかに集まりたいところだが、政府関係の施設でそれをやると露見する可能性もある。最寄りの市街地へ行く方法を後で説明するから、現地集合で頼む」


 話し合いは終了――優七達は準備を始めることとなった。


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