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フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第五話

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彼の居所

 優七達が麻子の研究室を訪ねたのはルームから脱して五分後。麻子は最初の事件関係者ということとシステム従事者ということもあってか個室が与えられているらしく、たくさんのPCが存在する騒々しい部屋が、彼女のものだった。


 その一つに向かって麻子は解析を始める。


「どれくらい時間が掛かるかは、わからないわね。すぐに終わるかもしれないし、ものすごく時間が掛かるかもしれない」


 呟く麻子――それも仕方がないと優七は思う。


「私達に、できることはある?」


 桜が問い掛ける。すると麻子は頭をかきつつ、


「そうね……といっても当然プログラミングの知識がいるから解析の手伝いは無理ね……とりあえず、三十分ほど待ってもらえないかしら?」

「三十分?」

「一通り確認作業をするだけでも、そのくらいはかかるのよ。何かとっかかりを見つけたらすぐに連絡するから」


 というわけで優七達は部屋を出る。またも待たなければならない状況で、優七としても少しばかりフラストレーションが溜まってしまう。


「焦るのはわかるけど、落ち着かないと」


 桜が言う。それに優七は小さく頷き――休憩することにした。

 自販機のある休憩スペースで、暖かい缶のお茶を飲みつつ優七は考える。今頃、二宮は何をしているのか。


 不安だけが募るが、そもそも優七が彼と遭遇してどのようなことになるのかもまだ問題だった。そのまま戦闘に入るなどという可能性もゼロではなく――そのような場合、どうすればいいのか。


「……あの」


 雪菜だった。優七の隣まで来てベンチに腰掛けると、おもむろに話し出す。


「私は……その、戦闘とかできるかわからないし、もし危なくなったら、逃げるよう言ってくれれば……」


 優七としては何も答えられない。すると雪菜は俯いた。


「その、ごめんなさい」

「謝る必要はないよ」


 優七の言葉に雪菜は沈黙。さらに何か言おうとした矢先、


「優七君」


 桜だった。彼女は優七の真正面に立つと、話を始める。


「もし、麻子さんが解析できたとしたら……すぐにでも行動すべきだと思う」

「わかってる」

「二宮君が見つかったら、どうする?」


 難しい質問だった。優七もそれをずっと考え、答えを決めきれていない。


「……説得ができる状況なのかな」


 桜も困惑した表情。結局、そうした精神状態にあるのかどうかで全てが決まってしまう。


「けど、どういう状況であれ……まずは探し出さないといけないよな」


 優七の言葉に近くにいたRINも頷く。それについては桜も雪菜も異論はないようだ。

 その時、麻子休憩スペースへとやってきた。まだ三十分経過していない。これは――


「わかったわ。あまりにも簡単にいったから、逆に驚いたくらい」


 最初の言葉によって、優七達も硬い表情となる。


「座標に関して言えば、現実世界のGPS座標とある程度リンクしていることがわかったわ。一番の疑問はそうした報告は一切ないというのに、今こうして居所がわかるということかしら」

「敵が何かをしているから突如こういうことができるように……ということではないでしょうか」


 桜が言う。麻子はしばし渋い顔を示したが――


「……それしか考えられないわよね。まあいいわ。ともかく居所はわかった。占い師に何度も居場所を尋ねることで捕捉できるようになる」

「それなら――」

「けど、これについては江口さんとも相談だけど、内密にやるべきだと思う」


 麻子の意見。それに優七は問い掛ける。


「政府側に敵がいるから、ですよね?」

「ええ。上位レベルの情報を取得できるとなると、上の人に牛谷達と手を結んでいる人がいるのは間違いないはずよ」

「……そちらの調査は?」

「二宮君が脱走した時点で江口さんが調べているはずだけど、それだってすぐに終わるわけではないでしょう。相手だってその辺りの対策をしている可能性は高いし……ともかく、今ある確固たる情報は二宮君の居所だけ」

「見つけて、どうしますか?」


 RINの問い掛けだった。それに麻子が聞き返す。


「どうする、って?」

「やり方は二通りあると思いますが」


 二通り――優七も言いたいことはわかった。即ち、


「二宮を連れ戻すことを優先するか、相手を尾行して敵の居所を探るか」

「そういうこと」

「私は、連れ戻す選択をすべきだと思うわ」


 麻子が発言。それに優七達は注目する。


「現在、二宮君を単独行動させているというわけではないと思う。なら彼の近くには連れ出した当人がいる……その人物を合わせて捕まえることができれば、牛谷達とも一気に接近できる」


 彼女の言葉に優七も内心賛同。さらに桜やRINも同じようで――麻子は発言した。


「決まりのようね……江口さんにまず連絡をした方がいいわね」

「話すのは江口さんだけ、ということでいいんですよね?」


 RINが問う。麻子は即座に頷いた。


「そうしましょう……あとは、占い師からすぐに情報が取れるような体勢を整え、さらに私がそれを解析できるようしておけば、居所を把握することができる」

「その人員は、私達から?」

「……あの、私がやりましょうか」


 雪菜が小さく手を上げた。それに優七達は一同視線を向ける。


「戦闘については……正直、私は全然役に立たないと思うから……」

「……占い師から情報を取る役目も必要なのを考えれば、それもまたアリだと思うけど、いいの?」

「はい」


 頷く雪菜。ならばと、麻子は彼女に告げる。


「なら、お願いするわ」


 優七としては、それでいいのかと思ったのだが――適材適所という観点から見れば、一番安全な役割を担当するのはベストと言える。


「残りの三人で、二宮君を追うわけだけど……RINさんはあまり出張ると目立つような気が」

「変装するから大丈夫」


 RINは自信満々に告げる。確かに雪菜と共に行動していた時バレている様子はなかったので、大丈夫である可能性は高いが――


「……座標位置を詳しく解析して、どこにいるのかをすぐに出すわ。それで雪菜ちゃん。協力してくれる?」

「はい」

「なら、ルームへ。あ、占いについては別の所で行いましょう。私が知る人の少ない場所があるから、そこへ」


 ――そこから優七達は会話を重ね、方針が決定する。


 全員が各々に行動開始。麻子が雪菜を占い師のいるルームへ案内した後、解析を開始。少しして見つけた座標は、郊外だった。


「マップで見ると、人口密度の少ない場所ね……ここからそう遠くない場所みたい。ルームを経由していくのは難しいから、タクシーを手配するわ……ん、出てくる情報としては企業が所有していたビルみたいね」

「所有、していた?」

「倒産したのよ。今は廃ビルになっているみたい」


 麻子の情報により、二宮達が何をしようとしているのかおぼろげながら理解できてくる。つまりその場所で、何かしら実験でもするのだろう。


「優七君達から最初にもらった位置情報と、ついさっき雪菜ちゃんから得た位置情報はほぼ一緒だった。よって、まだそこから動いていない」

「それだけわかれば充分です」


 優七は頷き、桜やRINと互いに顔を見合わせる。

 麻子がタクシーを呼び寄せ、来たタイミングで優七は声を発する。


「行こう」


 桜やRINと共に行動を開始する――その時優七は無事でいてくれと、二宮に対し心の中で呟いた。


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