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フュージョン・フロンティア  作者: 陽山純樹
第四話

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危惧していた事態

 雄叫びに対し、優七は一瞬魔どこかで魔物が出現したのだと思ったのだが、何か違うと思った。聞き覚えがある。

 それを理解した途端、背筋が凍る思いとなった。


「……どういった魔物と、交戦していたんだ?」


 優七は即座に近くにいたプレイヤーに問う。すると黒いローブを着た魔物という返答がきて――まずいと悟る。


「遠藤!」


 即座に優七は呼び掛けた。


「バグにより二宮達が戦っていた魔物が、ここに来た可能性がある!」


 言葉に、遠藤や雨内は顔をこわばらせた。


「バ、バグ!?」

「転移アイテムを使用した場合、光に魔物が巻き込まれると、時折一緒に転移するバグがあるんだよ!」


 それこそ、優七が危惧していたこと――そして、それが起きてしまった。


「とにかく、すぐに戻れ!」

「上級レベルの魔物なのはわかるけど、ここで対処しても――」

「駄目だ! 話によると黒いローブの魔物……そいつは、間違いなくルーンロードだ……避難しないとまずい!」


 ――決して、能力的には高くない。ブラッディクラウンよりHPはあるが、攻撃を数度与えれば優七一人でも十分倒せる相手。だが、問題はそこではない。


 この魔物は戦闘モードに入ると増援を際限なく呼ぶ能力を持っている。もっともその魔物の能力はルーンロードと遭遇するレベルに到達していればそれほど怖くないし、数が来ても優七ならば勝てる自信がある。ただしこれはあくまで攻撃力の話。HPが高く壁役としての機能を持ち、なおかつこの場にいる遠藤を含めた面々にとっては紛うことなき強敵であった。


 戦闘モードはプレイヤーが近くにいることで発動するのだが――そのモードになると一定時間経過しなければ絶対に戻らない。よって、先ほどの咆哮もあり、ルーンロードは新たに魔物を生み出している可能性がある。


 そして、ここからが恐ろしい所だった。過去転移バグにより移動してしまった魔物は、システム通りの挙動を行うのだが――今回の場合はダンジョン内にいる魔物。ここが最大の問題だった。バグについて麻子など解析を担当する人が調査した結果、一つの結論を導き出された。


 転移バグにより移動したダンジョン内の魔物は、増援の魔物を含めNPCにすら襲い掛かる――さらに、その行動範囲は実質無制限。より正確に言えば、NPCが出現することのないダンジョン内では設定の必要もなかったためか、内部的に処理されていなかった。さらに行動範囲もダンジョン内ならば元々限定されているため、そういう設定を組み込まれていなかった。


 つまり、バグにより出現したルーンロードは、その増援を利用しNPCであるプレイヤー以外の面々を襲うようになる。


「すぐに戻ってくれ! そして、政府に連絡してくれ!」

「れ、連絡……!?」

「ルーンロードが転移バグにより出現した――これだけ言えば通じるはずだ!」


 バグの存在をわかっていながらも、政府はプレイヤーの持ち物を強制的に接収することなどできなかったため、黙認するような状況になっていた。その中で、最悪の想定というものが存在する。それが、ルーンロードの出現。

 たとえばブラッディクラウンは確かに脅威だが、それは他の魔物が協力であればこそ。その魔物自体に攻撃力がほとんどないため、確かに厄介だが単独で出現したならば対処はそう難しくない。


 だが、ルーンロードは違う。増援を生み出し、なおかつその魔物達は周囲の人間達に襲い掛かる――最悪以外の何物でもない。

 優七の指示を受け、遠藤達は動き出す。さらに周囲の面々は避難するべく移動を開始する。


 その間にも魔物の雄叫びが聞こえる。ここで優七は改めて思い出す。ルーンロードは魔物を生み出す際声を上げる。あれは、間違いなくその声だ。


(一度に出現する魔物の数は五体前後だったはず……一人で対処できるか?)


 だが、優七を除いて生み出された配下の魔物を倒すことも難しいのではというレベルであるのは間違いない――よって、優七は迷う。ここで迎撃するか、それとも全員と共に戻るのか。

 どうやらルーンロードは森の中に退いているようなので、逃げる時間だけはある。しかしこの段階で倒さなければ魔物の数がさらに増える。あまり悠長にもしていられない。


(一定時間で戦闘モードは解除されるけど……それを待っているのも……)


 優七はそこで決断。剣を握り締め、去ろうとする遠藤へ告げた。


「俺は魔物を倒す! 遠藤は連絡を!」

「……わかった!」


 そうして他の面々は下がっていく。優七を除く全員がこの場を離れて行き……残った優七は一人、深呼吸をした。


「行くか」


 遠藤に任せていれば、連絡はしてくれるだろう――優七は頭の中で思った後一人歩き出す。まだ魔物の気配はないが、それでも森の奥にルーンロードがいるのは間違いない。慎重に行かなければ。


「俺のパラメーターなら、倒すのはそう難しくない……けど」


 徒党を組まれた場合、下手をすると突破されてしまう可能性もある。ルーンロードが生み出した魔物は基本周囲にいるプレイ―ヤーに襲い掛かるよう設定されていたはずだが、転移バグによりその辺りも変わってしまっている可能性もある。なので、動きによっては優七も面倒な対処を迫られることとなる。


 優七はゆっくりとした足取りで森へと進もうとする。その時、前方から気配が。

 来たか、と優七が剣を構えると、前方に赤い鎧を着た騎士のような風貌の魔物が出現。その顔は髑髏になっており、優七はルーンロード配下の魔物だと即理解する。名は確か――バーミリオンナイト。


「ルーンロードがどこにいるかわからないけど……少なくとも、生み出した魔物はこっちに来ている……か?」


 そうであれば全力で食い止めなければならない――考える間に魔物がこちらに気付き、優七へと走り出す。

 なおかつ、周囲の茂みからさらに同じ魔物が二体登場。数で迫られるとさすがに――と優七は一瞬思ったが、弱音は吐いていられない。


 そこで優七は『セイントエッジ』を起動し、横薙ぎを決める。大振りではあったが突撃するバーミリオンナイトは避けることができず、合計三体は一様に吹き飛んだ。

 だが、これで倒れる程HPは低くない――というより耐久力が取り柄の魔物であるため、優七でも一撃というわけにはいかない。


「もし抜けられても遠藤達が対処できるよう、HPを減らすようにするか……? それとも、各個撃破で全部倒すか?」


 優七は悩む。だがその間にも魔物は体勢を立て直し攻撃を仕掛けてくる。

 近づいてくるバーミリオンナイトに『エアブレイド』を放つ。だが魔物は剣をかざしガードした。見た目上いくらか衝撃が抜けてダメージを与えられた様子だが、それでも倒れない。


「剣術レベルが高いんだったか……相当面倒な相手だ……!」


 感想を述べた時、さらに森の奥から雄叫びが聞こえる。さらなる増援――優七が認識した直後、茂みの奥からガサガサと何かが進む音が聞こえた。


「くっ……!」


 別のバーミリオンナイトが進んでいるのだと認識し、優七はそちらへ向かおうとする。だが交戦していた三体がまたも襲い掛かってくる。やむなく『セイントエッジ』を起動し薙ぎ払うが、学習し多少ダメージを受けながらも攻撃を受け流した。


「まずい……!」


 止められない。優七自身は特に問題ないが、それでも多勢に無勢であることに変わりはない。

 すぐに遠藤達の所へ――そう考えながら優七は目の前の三体を短期決戦で倒すべく、剣を強く握りしめた。


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