眉目秀麗
僕の専門は生物学、だから最初深海の嘆きで出てきたチャールズ・ダーウィンも実は図書案内で知った。大翔も生物専攻。大翔はスポーツもできるし読書もそれなりにできるが、先入観がすごい。だからブスでもない人をブスだと言ったり、あいつはもう一回失敗するとか陰口をたたく。そういった影の部分に僕は嫌気がさし、何度も諭しているのだがまるでやめない。僕は逆に最初の印象と後でなんか違うなという後の印象と前の印象のすれ違いを重視する。例えば、最初大翔はただの好青年だと思っていた。後で先入観が強いやつだと気づく。→半分嫌いになる。といった感じ。今日は大翔は来ない。一人で黙々と羽を伸ばして読書だ。今日大学図書館で手に取った小説は「眉目秀麗」美の遺伝子と自然選択のせめぎ合いをモチーフに孤島に行った美男美女カップルとサバイバルに優れた元軍人が島から脱出できなくなる。そこから、生き残りをかけたサバイバルが始まり最初は協調するもジャングルのトラや天空のタカ、海のトカゲなど様々な脅威に遭遇し、女性側が軍人を見つめる目が日に日に変わり、とうとう眉目秀麗の彼氏は命を落としてしまうという筋書きになってる。美の遺伝子は異性へのアピールにはいいが捕食者への誘因になるため外敵に対する生存には適さないというものだった。生物学と小説は相性がいいと個人的には思う。書き出しも見てみて。「はじめに 眉目秀麗とは美を表す言葉であるが、そのような特徴を持つ人々は孤島でのサバイバルを強いられたらどうするのか。あっという間に滅んでしまうのではないだろうか。本書では繰り返し野生動物の脅威との生存闘争、美しい男女と軍人の織り成す愛憎劇を描く。シナリオの終末には読者からの期待に応えて生物学の理論に沿った順を追った展開にしたい。」とこうあり、大翔だったらどう解釈するか。頭を悩ませても答えは出ない。野生のカラスが外で一羽で鳴いている。ごみ漁りは済んだのか。ここら辺はネズミも出るもしかしたら狙ってるのかもしれない。こちらはオレンジティーを室内で優雅に飲む。もちろんペットボトル。物の試しに、今まで読んできた大学の参考書を眺めてみる。「複雑系的プランA」これは金山義彦先生の名著で「一言では言い表せない生物学のまとめ」を著したものである。たとえば海がある。太古の昔海だった場所から陸地が現れ魚類から両生類が進化した。またクジラの祖先は海から陸へまた海へと先祖返りした。とあるがこれは爬虫類への進化の過程で強靭な皮膚を獲得したため完全な陸上生活が紫外線下でも可能になったということだそうだ。要は「複雑に絡み合う要素が一つのシステムをなしその中で形作られるシナリオや経緯の構成こそが重要である」ということである。物理では量を扱う。それは数やベクトル。何にせよ扱う状態変数は膨大になる。基本的には着目したい変数以外をネグレクトする。やや蛇足になった。ともう夕暮れ時だ自販機行こ。
外は寒く、夕日が沈んでいく。「こんばんは!」
と声をかけてきたのは小笠原城
「おおびっくりした」
自販機前で鉢合わせるのはこれが最初だ。
「泰輔憂鬱そうだねなにかあった?」
「うーんと個体一名をネグレクト中」
「え、大翔と何かあった??」
「いやこっちの感想」
コーラを選択し、購入する。支払いはSuicarだ。
「小笠原さん、空気の震えって普段感じる」
「え、何急に」
「いや、基本的に人間って着目する事柄以外が目に入らないんだって要は興味本位に突き進むってこと」
「ああ人間一般に言えることかしら??」
「まあ今日はこんなとこにしとこうか」
全体は部分の総和以上。システムのエネルギーの書き下し、僕はできているのだろうか。僕は高校2年でプールサイドからも大好きな陸上からも足を洗った。理由は底辺だったからだ。そんな中でも大翔は僕に人権を培ってくれた彼のために何ができるか考えなきゃ。
図書館に戻る。「複雑系プランA」が自然に開いた!!空いたページを開くとそこには。「問題A:適応度について説明しなさい。」「問題B:ロトカボルテラ方程式について説明しなさい」
そのほか問題がいろいろあり最終的に「エピジェネティクスについて説明しなさい」
を選択し回答を参考書に書いた。
「① DNAメチル化
DNAの特定の場所にメチル基が付く
→ 遺伝子が発現しにくくなる(OFF寄り)
② ヒストン修飾
DNAを巻いているヒストンタンパク質の化学修飾
→ DNAの開きやすさが変わる
→ 発現量が変化
③ ノンコーディングRNA
遺伝子発現を間接的に制御するRNA」
すると突然。スマホに大翔から着信が。「お前、4/10,chatgpt使ったろ。」
「お前の行動全部監視してるからな」
「あと、次ディスったら地獄見るぞ」
「なんだこれ」
画像が添付されており
泥酔状態の小笠原城が映っていた。
思考を先取りしたかのように
「あ、大丈夫手は付けてないww」
「俺はお前の思考感情行動全部スマホで管理できる」
「だからシカトとかもNG」
なんだこれーふと靄っとした違和感が首をもたげた
「いつもの大翔ならこんな連絡よこさない」と思わず独り言を口にした。
「お。泰輔じゃん探したよ」
「大翔!!今お前から着信があって」
「ああこれ実はLINEがハッキングされてて」
「ワズマン擬態じゃん」
「ああ、アリそっくりに化けるアリの社会に溶け込む擬態形式だっけ」
「裏密教システムについて教えてくれよ」
「いいよ。喫煙所行くぞ」
喫煙所にて。お前も一本吸え。
カチッとライターで火をともし煙草を吹かせる。
「タバコは初めてだ」
「そーなの吸ってるかと思ってた」
「で、裏密教システムって何??」
「ルールは簡単、現世利益を来世海棲動物送りになる代わりに謳歌できるこれが原則1」
「次に浦島太郎の生まれ変わりを抹殺するこれが原則2」
「え、じゃああのままついていったら」
「お前は確実に死んでた」
「ルールはもうないの」
「他にもあるにはある」
「例えば何」
「ルール3浦島太郎転生者の暗殺の狩場である「世界」を毎回図書館で再構成するのは高僧」
「おっしゃる通りです」
「ルール4高僧はハンデつきで勝負に挑むつまり二人組相手にしか勝負を仕掛けない」
「確かに二人組の時だけ」
「ルール5浦島太郎の転生者を図書館司書の進路に誘導し図書館通いを日課にしろ」
「運命支配だな」
「ルール6 missionは敵対組織が使う暗号である。「世界」の攻略はスマホで可能DAPPLE社製のスマホのLINEでcodeを入力すると月1000円で攻略用ツールがつかえる。これは実はわが裏密教システムの相互補完システムである。ルール6捨てる神あれば拾う神あり」
「ルール6お前知ってただろう」
「あ、ばれた??」
「お前も俺も図書館司書になれないもうわかっただろう。一緒にやめよう」
泰輔の理解をここで書いておこう。長引けば長引くほど不利な戦いである。相手にハンデを与えつかの間の希望で躍らせ長期化すると裏密教システム勢が有利になるよう仕組んだゲーム。こっちも資金不足でそれどころじゃない。図書館にも通いたいし図書館司書にもなりたいぐわー。
「ワズマン擬態のクリア条件は?」
「破門された構成員が裏密教システムの全貌をリークする」
「mission clear」LINEの画面に表示されたボーナスとかもついてこないしなんなんだこのシステム。
日は沈み、まさしく僕の没落を物語っているかのようだった。
帰り道
「大翔は図書館行かないのかもう」
「いや意地でも行くよ」
「でも司書にはお互い」
「ならない」




