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夢あるねジジイ

「おーいたいた」


 七星(ななほし)は、スキンヘッドの男を2人連れてその公園へとやって来た。仮設トイレの前には、流星(りゅうせい)が1人で立っている。手に拳銃を握っている流星は、その銃口を七星に向けて警告した。


「林郷さんはすでに安全な所へ避難しました」

「嘘言わんでくれ。こいつらは星和ちゃん追跡の機能を持った高性能なロボットじゃ。この辺りにおると反応しとる」

「ロボット……」


 流星の視線が、星型のサングラスをかけたスキンヘッドの男に向かう。干波(ほしなみ)という男にそっくりの彼らは、おそらく天星会に所属する星憑きが作り出したロボットなのだろうと予測がつく。それが2体もいるとなると厄介だ。流星はゆっくり息を吐き出す。


「先にお前さんを潰すのが先じゃな」

「出来るならやってみてくださいよ」

「若いもんは威勢が良くてよろしい……よし、あのガキを殺せ」


 七星が指示をすると、2人の男が一斉に走り出して流星に向かってきた。焦ることなく構え直し、パンっパンっと足を撃ち抜くが止まることはない。銃弾は弾かれて砂場に転がった。

 男二人がナイフを取り出し、流星に向けて振り払う。一人の男のナイフは受け流し、もう一人はみぞおちを蹴り飛ばして、距離をとった。男たちの動きは人間に比べて鈍い。が、銃で撃てないとなると決定打に欠ける。流星はどうしたもんかと思考した。


 と、その時、静観していたはずの七星が頭上から降ってきた。流星は間一髪で気が付き、体勢を崩しながらも後ろに下がった。


「うおっ!?」

「む、避けよったか」

「高いところが好きな人ですねっ……サルかよ」

「今の若者は外で遊ばんのじゃろ? 木登りも出来んとは情けない」


 流星は七星を狙うように拳銃を構えるが、スキンヘッドの男たちが庇うので舌打ちを溢した。流星の持つ銃には殺傷能力がない。ロボットに撃ち込んだところで無駄になるだけだろう。

 そして、感じる尿意。便意はおさまったはずなのに、またしても半径3m以内に入られ、能力を使われたようだ。もういっそ漏らしてしまった方が集中できるかもしれないが、漏らしている数秒は無防備に等しい。


 自分一人の手には余る状況だ。それこそ、聡一郎がいればまた話が変わるのだが……と流星は未だに現れない上司の顔を思い浮かべた。


「聡一郎……あいつ本当に仕事しない……」


 恨みを込めて呟くと、七星がピクリと反応した。


「聡一郎……?」

「……?」

「この辺りに聡一郎がおるんか?」

「知っているんですか? なぜ?」

「……ふむ」


 七星は何か考えるような素振りをして、それから男二人に指示を出した。


「星和を捕まえたらすぐに撤退じゃ。さっさとガキは殺せ」


 男たちの一人が、拳銃を取り出す。流星はすぐにわかった。自分の持つ拳銃と違い、殺傷能力のある武器だと。一発なら避けられるだろうが、避けた瞬間絶対に漏らす。漏らしている内にもう一人のスキンヘッドと七星に追撃される。かといって避けなければ頭か心臓を撃ち抜かれるだろう。どうあがいても絶望だ。


「中々いい能力ですね。ええ、思ったより脅威でしたよ」

「そうじゃろ? 中々気に入っとる」

「……」

「ただ、ワシなんかよりもっと有用な能力、強い能力を持つ星憑きはたくさんおる。そしてそいつらは、自分の能力、置かれた環境に苦しみ、嘆いておる」

「……」

「天星会は、感染者である星憑きの、心の拠り所じゃ」

「どうして林郷さんを狙う? あいつは感染者じゃない」

「我々は林郷星和を利用し……」


 流星の視線がゆっくりとスキンヘッド男の頭上に動いた。彼らの頭上には木の枝が生い茂っている。


「星神様をこの地球に召喚し、すべての人類を感染者とするのじゃ!」


 七星が高らかに宣言した時だった。


 がさっと木の枝が大きく揺れた。拳銃を持ったスキンヘッドの男の上に、軽やかに舞い降りてくる陰。その女は男の首元にある星形のボタンを指で押した。そしてそのまま、電池が切れたように動かなくなった男を下敷きにして、地面に着地する。





「人類皆超能力者? 夢あるねクソジジイ」


 星和は倒れた男の、星型のサングラスをかけながらそう言って笑った。


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