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カミノコ

 遥か昔、千年以上も前のこと。宇宙からもたらされたウイルス……星憑きを星憑きたらしめる何かが飛来した。


 様々書き記された書物から読み解くに、それは見ただけで人々を恐怖に陥れ、狂わせ、自ら破滅に向かわせるような恐ろしい()()だったとある。無数の目がある、多くの腕が生えている、無数の足がムカデのように生えて蠢いているなど、書物によってさまざまだ。どれが正解かなどわからない。


 その()()は、意外にも人間に友好的だったと言われている。困っている子どもがいれば気まぐれに手を差し伸べ、猛獣に襲われた娘を助け、飢饉に苦しむ村人に自らの肉を分け与えたらしい。

 もちろんその姿を見たものは発狂してしまうため、本当にそれをやったのが()()の仕業なのかは定かではない。


 けれど、そう、その肉を分け与えられた人間。


 彼らの様子がおかしくなったのだ。到底人が持ち上げられないような大岩を一人で持ち上げたり、何もないところから火を出したり、雨の降らない土地に雨を降らせたものもいたと聞く。それらの力を得たものは皆、()()の肉を食べたものだった。


 人々は何かを神様と崇めた。恐ろしい姿をしているが、人々を助けてくれる救世主だと勘違いしたのだ。実際は、そんなありがたい存在ではなかった。


 その力を得たものは皆、不自然に消えてなくなるからだ。富を築き上げ美しい女を嫁にした男たち、その力で地位を確立した男と子を為した女たち、その皆が、跡形もなく消え去った。残された子どもたちは親が消え、気づかれないまま亡くなっていたり、運よく生きた者も親なしに生きるのに苦労したりして早く亡くなった。


 それからも稀に、不思議な力を持つ人間が生まれることはあったが、両親はその子を呪いの子だと言って山に捨て、育てなくなった。呪いの子が生まれると自分たちが消されてしまうと怯えたからだ。


 しかし、そうは言っても星憑きの力は偉大だ。人の役に立つ力もある。星憑きの存在を知ったある一族は、捨てられた星憑き達を引き取り、育て、その力を世に役立てた。それが今の星憑きの始まりである。











星和(せな)、僕の星憑きの力は何だと思う?」


 少年にそう問いかけられ、星和は少しだけ首を捻って考えてから答える。


「めっちゃ美人になれるのうりょく?」

「この顔は自前だよ」

「うざっ」


 顔をしかめた星和に、六星(ろくほし)はくすくす笑った。少年は不満げな星和のことを黙って見つめて、それから懐かしむように遠くを見た。


「僕は長寿の力を得た。君の数倍長く生きている」

「……たしかに、じいちゃんみたいな落ち着きようだな」

「僕は一度だけ神様を見たことがあるよ」


 少年は目を細めて、微笑んだように見えた。目にかかる銀髪も、長い睫毛も白い肌も、血色のいい唇もどれもが完璧な少年だ。まるでどっかの国の芸術作品みたいに綺麗な顔だと、星和はぼんやり見つめながら思った。


「星和、あれは君に似ていたよ」

「わたしがばけものみたいな顔だって話か?」

「違うよ。聞いて星和。僕は君の母親の写真を見たんだ。僕がずっと神様を探し続けてきたから。だから君にたどり着いた」


 ルビーのように赤く光る瞳が画面越しに星和を捉える。その目にはどこか理性的なものが消えて、獰猛な肉食動物に睨まれたような恐怖を感じた。


「君の母親はどこにいった?」

「……」

「ねえ、星和。君は」


 カミノコなんじゃないか?

 星和の脳内で、その音は上手く処理されずに、不明瞭な単語として脳へと滑りこんでいった。







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