幕間
「僕じゃ荷が重すぎます」
狭い車内の中、後部座席に座った流星がそう言った。既に家に送り届けたため、星和はいない。聡一郎はミラーをちらっと見て流星の顔を確認する。真面目な顔で彼はこちらを見ていた。
「今日のやつは雑魚も雑魚だったでしょ。あんなんで弱音吐くの? 君、優秀だって聞いてたんだけど」
「やつら、何を企んでるか知りませんけど、おふざけとは思えないです。本気で殺しにかかってきた。正直、今日だって無傷で済んだのは星和が拳銃持ちを運よく戦闘不能にしたからですよ」
「あの子好戦的だよねえ」
「星和を守るために僕らが派遣されたんでしょう。本末転倒ですよこれじゃ」
「ははっ、確かに」
真面目に取り合う気のなさそうな聡一郎に、流星は眉間に皺を寄せた。そんな流星に気づいてかは知らないが、鞄から飴を取り出し、ほい、と聡一郎が渡す。何で飴? と訝し気に聡一郎を見る流星だったが、ほら、と押し付けられて渋々受け取った。
「ま、持っていかれた方が楽だとは思ってるよ。上は……いや、上も二分化してんのかな」
「え?」
「本気で守る気なら仕事しない俺とまだ未熟な君を派遣するわけないでしょ」
「……いや、え? どういうことですか?」
流星が本気で理解できないという顔をして問う。聡一郎は、車内から見える月を眺めながら、ふーと息を吐き出した。
「俺らが声を上げたところで、何が変わるんだか」
七星の言葉を思い出しながら、聡一郎はそう呟いたのだった。
「七星がやられました」
スキンヘッドの男は、食事をしている少年にそう報告した。彼はそれを聞いてから箸を置き、水を飲んだ。
「干波、七星に渡したお前のクローンは融通が利かなすぎる。もっとどうにかならないのか? この間一体で送り込んだあいつは随分優秀だっただろう?」
少年がそう聞くと、干波は申し訳ありませんと俯いた。
「大して役に立たない連中を護衛に回すように仕組んだはずだが、2人も派遣するなんて……やっぱり、私が直接護衛を星憑現象統括局に指定すればよかった」
「そこまで手を出せば怪しまれるのでは」
干波の指摘に、少年はそれもそうだと納得する。すると、傍で食事を見守っていた女性が、すっと立ち上がった。
「ボス、次は私が行きましょう」
名乗り出たのは、色白の穏やかな笑みを浮かべた女性であった。髪を後ろで一つにまとめて、星のピンで前髪を留めている。
「平和的に、林郷星和を連れてまいります」
「頼んだよ、六星」
「どんな可愛い子なのかしら……星和ちゃん……♡」
六星は微笑みを浮かべて、部屋を出て行った。




