少女と主人公
この世界には1つの大陸があり、様々な地域がある。
地域ごとに国があり、世界各地に分散している。
人類の歴史上、国々は戦争を絶え間なく続け、滅亡と繁栄を繰り返す。
我々が生きるこの時代も、例外ではないのだ。
しかし魔法は、いつの時代もその国の歴史に大きな影響を及ぼしてきた。
草・炎・水・岩・氷・風・雷・光・闇、これらの魔法は現在確認されている魔法の全種類だ。
人々は日々技術力を向上させ、時には戦争を一変させるほどの兵器も生み出してきた。
しかし戦争の主軸が魔法であるという点は、昔から変わらないままだ。
人々はモンスターという共通する敵がいながらも、争いを続けていくのだ。
しかし人類は努力した。国々は外交を精力的に行い、つかの間の平和を享受した。
そして平和の期間が長くなればなるほど、人々の記憶から悲惨な歴史は薄れていくのだ。
もはや戦時に生まれた人も、老いて亡くなってもおかしくないほどの年月が経った。
これは、人々が紡いだ歴史、そして人類と魔法を記した物語だ。
ー中央平原・エスターヴァ王朝・リーヴァ村ー
「凪、なにしてるの?」
「うわぁ!バ、バレリア?」
突然隣から声がしたから振り向いてみたら、そこには不思議そうに顔を近づけ、覗いてくる少女、バレリアがいた。
同年代にしては高い背丈、気味の悪いほどに白い肌、真紅の長い髪、そして翡翠のような瞳。
そして、めったに笑わない。
いつも一人で部屋にこもっているらしい。
友達と遊んでいるところも見たことがない。かわいそうに思った過去の自分は、家が近いこともあり、時々バレリアの家に顔を出していたのだが、いつもそっけない態度をとられていた。14にもなった今となっては、ただ家が近所の同年代の女性、ただそれだけだ。
それが、教会を抜け出して草原で寝て時間をつぶしていたら、急に話しかけられたものだ。
驚いた自分は彼女の眼を見ていった。
「ど、どうしてここに?」
「別に。」
・・・すごく気まずい。てか、話しかけてきたくせに、なにも話題を振らないとは。
それから少しの間、気まずさに耐えかねた俺は、一方的に話題を振る時間が続いた。
そこで気晴らしもかねて、簡易的な魔法を見せてやった。
俺は学業こそ才がなかったが、魔法に関してはそこそこできるらしい。
本当に簡単な草魔法で、ただ一輪のアネモネの花を出してやっただけだった。
彼女はその花を少し見たのちに、どこかに行ってしまった。なにかまずい花だっただろうか。
そんなことを考えていたが、どうでもよくなってきた。
そして俺は、ふと思い出したように、神父様に怒られないうちに、教会へと戻ることにした。