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三題噺もどき2

ぶり返す

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくごじゅういち。

 


 昨日は確か、この時間でももう少し涼しかったと思うんだけど。

 日差しの温かさがちょうどいぐらいに感じられていたはずなんだけど。

「……あつい…?」

 なぜか戸惑いのような声が漏れる。

 いや、ホントに分からない。

 陽が照ってはいるから、暑さは少々感じるかもしれないが……昨日は確かに丁度良かった。

 手に持っている日傘は毎日の必需品なので、状況は昨日とさして変わっていない。

 ……気温が高いということ以外は。

「……」

 いやなんで……?

 確かに数日前まではこれくらいの暑さがあった。

 昼間……というか太陽が昇っている間は、常にこもるような熱があった。

 そのせいで毎日汗に悩む日々だった。

「……」

 それがようやく、昨日一昨日あたりで終わったと思ったのに。

 なぜ……突然、今日になって戻るのだ。

 衣替えを急いで済ませてしまったのに……夏ものは奥にしまってしまった。

 この異常気象に対応しきれない……。

「……」

 日傘を持つ掌が、ジワリと汗をかいている。

 そのうちつるりと落としてしまいそうな気分になる。

 が、まぁ、肩に乗せているのでいきなり落とすことはないだろう。

「……」

 そこまで後悔して戸惑うなら、家を出る前に気づけと言う感じだろけど……。

 いやほんと。現在進行形で後悔している。

 少し買い物をするだけだから良いだろうと思ったのがよくなかったんだろう。

「……」

 出勤も買い物も基本徒歩なので、毎日日焼け対策をしつつ、外を歩くのだが。

 今日は休みで、ホントに少しだけ、近所のスーパーに行くだけのつもりだったから、良いだろうと。もう一度着替える方が面倒だと思ったので……。

「……」

 日傘もして、下は基本長めのズボン。半そでを着ていてもアームカバーなんかをつけたりしているから、それなりに暑さには平気ではあるが。それでもこの夏は大変だった。

 さすがにアームカバーは外そうかと思ったこともある。

 日傘だけは頑として譲らなかったけど。

「……」

 だからやっと夏が終わって、対策をしても丁度いいぐらいになったと思えば。

 これだ……。

 そりゃ戸惑うに決まっている。

 絶対にみんな同じこと思っている……ハズだと思いたい。

「……」

 スーパーへの道を歩きながら、暑さに絶望しつつ。

 夏物をもう一度出すべきかどうか悩む。

 ここまでは大した距離がないので、良いのだが。

 明日以降の職場への出勤の時の方が問題になる。

 暑さに耐性はあるにはあるが、夏のあの暑さをさらに秋の服装で感じるとなると……違う。

「……ぅゎ」

 涼しぃ……。

 そうこうしているうちに、スーパーにたどり着いた。

 自動ドアが開いた瞬間、ふわりとありがたい風が吹く。

 何も答えが出ないままにたどり着いてしまったが、まぁ、買い物しながらでも……

「……ぉぉ」

 アイスがすっからかん。

 野菜コーナーの反対側から入ったのだが、少し進むと冷凍食品などのコーナーがある。

 そこにあるアイスの棚が、きれいさっぱりなくなっていた。

 数個、あるにはあるが……あれもすぐ売れるんだろう。

 突然暑くなったから、大量に買っていかれたんだろう。

「んー……」

 私も何かアイスでも食べようかと思ってはいたんだが…これじゃぁなぁ。

 どうしたものかと、歩いていく。

 どうも暑すぎて、思考が働きそうにもないので、何かで冷やしたい。

「……ぁ」

 カゴを持ったまま歩いていると、ふいに足が止まる。

 飲料水のコーナーだ。

 水、お茶をはじめに、ジュースにコーヒー、紅茶など。様々。

 その中の一つを手に取る。

「……」

 透明の液体の中に、小さな泡が浮かんでは消えている。

 ラベルは水色に黄色の果物が描かれている。

「……」

 炭酸のレモネードである。

 さっぱりしている上に、これはそこまで甘さはない。

 今の暑さをどうにかするには丁度いいだろう。

「……さて」

 残りの買い物をして、帰る前にこれを飲んで。

 帰宅したら明日のことを考え直すとしよう。





 お題:日傘・レモネード・戸惑い

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