レナ·マスカルド①
分かっている。つもりだった。
昔から私は人に、特に男性に注目されやすかった。
この容姿と顔、私にとっていらないもの。
美しくあることは女性にとって誇らしいことかもしれない。
でも私にとってはそれは邪魔でしかない。
だから冒険者になった。
男勝りで、命がけで、鬼気迫るその立ち振る舞いがあれば男性はよってこないと思ったからだ。
一人でモンスターを狩り、たまに死にそうになりながらもレベルを上げていき、ダンジョンに潜りボスを倒して、冒険者としてのランクを上げていった。
ランクSになれば誰も寄ってこない。
強すぎる女に寄ってくる男なんていない。
そう思ってがむしゃらに、がむしゃらにレベルとランクを上げていた。
そしてランクAになり、単独では大変な任務につかされそうになったときに初めてパーティを組んだ。
男性1人、女性3人のパーティに。
そのパーティは男性と女性の中の1人が結婚しており、そして4人とも幼馴染というパーティだった。
既婚者なら、妻がいるパーティなら男性が私に寄ってくることはない。
そう踏んでパーティに入れてもらった。
パーティを組んでから戦闘が楽になったのを覚えている。
私と男性が前衛、幼馴染二人が中衛で遠方攻撃、妻が奥さん回復役とバランスの取れたパーティは効率よくモンスターやダンジョンをクリアしていった。
そして皆優しかった。
一人でやっていた私に団体での戦闘を教えてくれた。
特に奥さんが色々と親密になって教えてくれたのだ。
居心地が良かった。
このパーティなら私を私と見てくれると思っていた。
外見じゃなく中身である私を………
分かっている。つもりだった。
一年も経たない内に私はパーティを抜けた。いや、パーティが解散したのだ。
原因は………私だ。
ある日ダンジョンで野営をして、その日は私が火の番をしていた。
慣れたダンジョン。モンスターもこのパーティに手出ししないと踏んでいた。それほどに強くなった私達に向かってくるのモンスターはいないと……
モンスターでは、なかった。向かってきたのは……
背後から飛びかかるように向かってくる相手に対してギリギリのタイミングで避けて相手を焚き火に突っ込ませた。
そして衣類が燃え悶えるその姿に、顔に、私は凍りついた。
そこにいたのはパーティの中で唯一の男性だった。
そう、私は襲われかけたのだ。背後から強引に………
何かを叫んでいたがもう覚えていない。
ただ私に対して誘惑してきただろう!もう我慢出来るか!!など言われようのない言葉を言われ続けていたのは覚えている。
そして、そんな怒鳴り声で奥さんや幼馴染達は起きてきた。
もちろんここからは修羅場だ。この4人の修羅場だと。
しかし、そうはならなかった。何故なら……この女性3人は全員男性の"女"だったのだ。
めまいがした。そんなパーティに私はずっといたのかと思うと……
奥さんも私を夫が抱くことを了承していたのだ。
そんなありえないことを、私をあえてパーティに引き入れたのだ。
それを知った私は狂い、暴れ、そのパーティを壊滅させた。
殺してはいない。ただ二度と愚かなことを考えられないように心を壊した。
ランクSを目前に私は冒険者をやめた。
誰もいないところに行きたかった。誰とも会いたくなかった。
そんな感じでしばらく森の中で過ごしていた私に声をかけてくれたのが今の神父様。
詳しい事情を聞かずに私を教会へ招いてくれた。
そしてそこでシスターをやりなさいと。
ここなら神父様以外の男性は子供だけ。
そして更に教会の隣にある小屋にいる子供の世話をしなさいと言われた。