ポゲート
あの出来事から4年。
あれからずっと水浴びはシスター·レナと一緒。
もちろん二人で水浴びしている。
ここまでくればレナの裸は慣れたけど、それはそれでレナが「……やりすぎたかしら……」となにか僕にとって不吉なことを言っているような気がしたので無視することにした。
相変わらずに小屋の中で魔導書を読んでいる。
もう簡単な魔導書やちょっと難しいのは読み尽くし理解し、ショートカットで魔法を使えるようにまでにはなった。
そして沢山あった魔導書も残りは1割。
その1割がかなり難しい魔導書なのだ。古代語よりもまだ古い文字らしいので解読するのが難しい。やっと一冊読んでも他の魔導書で同じように解読出来ないのだ。
ここからは魔導書一つ一つが完全に孤立しているようなもの。
一冊読むのにかなりの時間がいるのだ。この前読み終わったのも2年もかかってしまった。
しかしその分魔法としては最高。
今回手に入ったのは収容魔法。その容量は恐らく限界はない。
この前湖の水を全て収容してもまだ全然余裕がある。
まだ入るという感覚は魔法の使用者だからなんとなく分かるのか、どれだけの量を、どの大きさまで、と、なんとなく分かる。
分かるからこそそこに限界が見えてこない。
本当にいい魔法が手に入った。これはマジで使える。
この収容魔法を"ポゲート"と名付けた。
"ポケット"と"ゲート"を合わせた名前だ。
このポゲートにはいまここにある魔導書を少しずつ収納している。
神父やシスターにバレないようにバレないように何日かに一冊ずつ。
何かに使えそうなものから優先的に収納していつでも引き出せるようにしている。
そしてこのポゲートはポゲートを発動する魔導書をポゲート自体に収納出来るので嵩張る魔導書を持たなくて済むという便利機能がついていた。
さらにショートカット出来る魔導書はポゲートから出さなくても使える。
これは本当の本当に使える。つまりはこの小屋にある大抵の魔導書をポゲートに収納すれば意識するだけで魔法が発動するのだ。
そんなの魔導師でも出来ないんじゃないか!?と喜んでいたけど上級魔導師ならそれぐらい当たり前だと本に書かれていたのでちょっとガクッときた。
で、でも、ステータスがない僕が魔道士と同じように魔法が使える。
そんな夢みたいなことが出来ているのだ。少しぐらいは浮かれてもいいじゃないか。どうせ外には出られない。レベル0の僕では簡単にモンスターに殺されるのがオチである。
それよりも、気になったことがある。
「………"ポケット"」
そう呟くと僕のポケットにポゲートの空間が現れるようになった。
そこから物を取り出したり入れたり出来るけど、本来ポゲートは僕の身長と同じくらいの大きさの異次元の穴が開くのだ。
なのにポケットと唱えると、本当にポケットにポゲートの穴が開く。
そしてもう一つ気になるのがとても不思議なのだ。
「………"ゲート"」
するとポゲートと同じように僕と同じ大きさの異次元の穴が開く。
しかしこの穴はポゲートとは何かが違う。雰囲気というのか、ポゲートは物を入れるための穴だと認識出来るが、このゲートは物ではなく他のもの。
…………もの。というよりも……人。が入れそうだと感じるのだ。
「………まさか、ね……」
あくまでもポゲートは収納魔法。
そこに人が入れる魔法なんて、それも異次元へ入れるなんて……
入ったとしてそれは大丈夫なのか??危険じゃないのか??帰ってこられるのか??
そんな思いがありこのゲートが何なのか試したことがない。
流石に試すのにかなりの勇気が必要になる。
これはいざとなったときに使おう。そう決めてゲートを閉じることにした。
そんなタイミングで小屋の扉からノック音がしたあと
「入りますよ。……あら、今日は珍しいく読んでないんですね」
「たまにはあるよ。そういうことも」
あれからさらにキレイになったシスターが今日もまた水浴びのために来てくれた。
だけど………なんか、今日は………
「ねぇシスター。なにか、あった??」
「どうしてですか??」
「………なんとなく??」
「なにもありません。ほら行きますよ」
そういって僕の手を取り外へと連れ出すシスター。
やっぱりなにかおかしいと思いながらもシスターの後に付いていく。
するとなにかおかしいことに気づいた。
周りから変な感じを、刺すような何かを受けている感覚があった。
そっちの方を見るとここの子供達がいた。
確か僕と同じぐらいの男達で、たまに外で遊んでいるのを見る。
他にもその男達よりも上の男達もいる。そして何故か睨んでいる。
えっ。僕……なにかしましたか??