特別実施試験②
お昼休みが終わり訓練所には多くの生徒が集まっていた。
その中にはミミィの班も。そしてアニスも。
「……なんでアンタもいるのよ……」
「いい機会だから見てきたらどうかって」
「…………本当は?」
「合コン設定してあげましょうか?って言ったら一発オッケイ!」
「いい性格してるわ本当に……」
こんな性格もジーペは知っている。
それでも付き合え続けるのは相性がいいのだろう。
「アニス。合コンはいいけど本気になったら……ダメだよ」
「もちろんよジーペ。私にはジーペしかいないわ…」
「アニス……」
「ジーペ……」
「パレス。塩持ってきて」
「もったいないから止めておこうね……」
二人だけの空間を作るジーペとアニス。
隣にいるミミィはイライラしていて、その隣にいるパレスはヒヤヒヤしている。
ミミィ達が座っている席から誰もが離れて座っており、みんなが近づきたくないと思われている。
それはジーペやアニス、ミミィがいるから。………ではない。
「それより………始まるよ3人とも」
「「「ッッ!!!」」」
一気に雰囲気が変わった。
それに対して3人は緊張感を持ち自然に姿勢が良くなる。
この班のリーダーはミミィではない。
存在感が薄いように思われるパレスこそこの班のリーダー。
そしてこの学校の中でもダントツに強い生徒なのだ。
普段はのほほんとしているが、こういう真面目な、特に実践や実戦になると人が変わったように雰囲気が強く荒々しくなる。
まるで強者が側にいるようなプレッシャーが襲いかかってくるのだ。
いつも3人でいたミミィやジーペもこれにはまだ慣れない。
特にアニスに至っては身体が震えジーペにしがみついている。
アニスは確かに強い。この中でも強さは一番だろう。
だけど強者となれば、それはパレスだ。
力によるアニスとは違い、パレスはその存在感が"戦士"と呼べる強さを持っているのだ。
それに気づいたパレスはすぐにその緊張感を解き
「ご、ごめんなさい……アニスちゃんがいたこと忘れてたよ……」
「き、気にしないで………」
「あ、アンタはもう……そういうのは3人だけにしなさい……」
「だね……アニス、大丈夫??」
「………う、うん……」
「本当にゴメンね。今日は"のんびりと見てるよ"」
本気出見ようとするとプレッシャーを出してしまう。
それが分かっているからこそ出した言葉。自分が強者と分かる言葉。
それに対してミミィは歯がゆく、悔しい気持ちになる。
昔からあまり周りに興味を持たないパレス。
そんなパレスを連れだして遊んでいたミミィ。
自分がパレスをと色々やらせていたのだが、そんな中一番ハマったのが………狩りだった。
狩りをしている時のパレスは人が変わったかのように凄まじい才能をみせた。実際に人が変わっているように気が強くなり口調も変わった。
それがミミィにとって、怖い、という感じにはならなかった。
むしろそれが嬉しくて、凄いと感じて、その才能を伸ばしてあげたいと感じた。
すると一気にパレスは大人も注目する狩人になった。
それは幼なじみとして誇らしかった。だがパレスは
『……僕一人は、つまらないよ……』
そういって狩人をやめたのだ。3人で遊んでいたいと。そう願って。
でもミミィはその才能を埋めてほしくなかった。
だから決めたのだ。冒険者になって3人でパレスの才能を開花させようと。
学校に入るとその才能は一気に開花した。
どんなことをやらせても常に一番。そしていつの間にか先生さえも凌ぐスピードで成長していった。
それは喜ばしいこと。なのにミミィはいまそれを焦っていた。
置いていかれると。このままだとパレスが一人で遠くにいくと……
嬉しいのに悔しい。
そんな複雑な感情がミミィの中に存在し、常にイライラしてしまい周りに当たってしまう。
まぁ普段から強気の態度であるミミィだが、それでも強く当たっていることを本人も自覚している。
(追いついてやる……!パレスを一人になんて……ッ!!!)
そう改めて決意をしていると訓練所全体が騒がしくなった。
考え事をしていたミミィは遅れて訓練所に入ってきた人物を見て、そして叫んだ。
「………は、はぁ〜!!?」




