魔導書
さらに3年後。8歳の話である。
魔導書にも色々なタイプがあることを知った。
まずは通常タイプ。
これは一般的な魔導書に文字が書かれているそれを読み解き知ることで魔法を顕現させるもの。
そして何度も読み返しが出来るので完全に魔導書の内容を理解すれば、本を持っているだけでショートカットでイメージだけで魔法が発動する。
なかなか便利ではあるが魔導書を繰り返し読むで理解するまでの時間がかかるという不便さもある。
次に発動固定タイプ。
一度魔法が発動すれば解除するまで魔法が継続するもの。
その分魔力の消費が激しいが常に魔法が展開されているのでこれはこれで便利である。
ただし数も少なく、一人が使えば解除するまで他の人は使えない。だから通常タイプよりも価値は上だという。
そして消滅タイプ。
強力な魔法がゆえに一度発動すれば魔導書ごと消滅する魔導書。
魔力も発動固定タイプよりも多く消費するが、それでも比べ物にならないぐらいに強力な魔導書である。
そしてこの魔導書は国宝と呼ばれるほどに価値がある。
つまりは国を守り、敵を殲滅するだけの力があるという。
「いいなー激レア魔導書。欲しいな〜」
と、軽いつもりで言っているが例え手に入っても読んだらその時点で魔力が枯渇して魔法を放つ前に死んでしまうだろう。
消滅タイプは他の魔導書と比べてえげつない特性がある。
それが読み始めたら最後、発動するまで魔力を吸い続けるのだ。
例え魔力が足りなくて止めようとしても魔導書がそれを許さない。
発動しなくても、発動させようと魔力を吸い続けるために大勢の人が死んだという。
そんな魔導書、欲しくない。
本当は欲しいけど、手にしたらきっと読んでしまうから欲しくない。
そんな欲しい、欲しくないという葛藤をしながら小屋にある半分以上を読破し理解した魔導書の中から、新たな一冊を手に取った所で
「また本ばかり読んで………」
「シスター。どうしたの??」
小屋の扉が開きそこからシスター·レナが現れた。
両手を組んで困った表情をするシスター。そんな表情されてもやることがないから仕方ない。
「ほら水浴びにいく時間を過ぎてるわよ」
「……本当だ。じゃなかったということで」
「ダメに決まってるでしょう。もう3日も身体を洗ってないのよ」
「3日ぐらい大丈夫だよシスター。運動してないから汗かいてない」
時計が指す時間は夜だった。
発動固定の火の魔法を使っているので常に部屋は明るい。
だから外が暗くなっても本は読めるのだ。
そして時計を見なければ時間なんて忘れる。
本を読むこと以外にやることがないのだ。責めないでほしい。
「そういうわけにもいかないわ。私は貴方を任されているのよ」
「頼んでない」
「どうしてそう捻くれになったのかしら??」
ここに閉じ込められていたらそうなる。
唯一出れるのはこうしてシスターと一緒に水浴びにいくときだけ。
それも誰もが寝静まった夜に外に出れる、その時だけ。
つまりはここを出れるのはその時だけなので気持ち的には出たいがせっかく新しい魔導書を読もうと………いや、
「………分かった。いくよ」
「あら。今日は素直ね」
「読んでいる途中よりもまだいいだけ。いこう」
「そうね。行きましょう」
その時のにこやかなシスターの表情はとても綺麗だった。なんて絶対に口が裂けても言わないと決めた。