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ギルドマスター、エスエ·サトラン

三人が通されたのは冒険者ギルドの一番高い階にある大きな部屋だった。

途中で何階なのか数え忘れたぐらいに階層がある。

なんでこんなに大きのかと聞いたら


「ここは冒険者の育成も兼ねていてな。

新米の冒険者はギルドで育てようという方針で新米冒険者はここで寝泊まりすることになってる。パーティの組み方や戦闘経験などギルドにいれば色んなことを色んなやつから教えてもらえたり教えたり出来るからな」


つまりは冒険者ギルドは冒険者学校みたいなこともしていることになる。そんなことをやるなんて初めて聞いた。


「っても、そんなことしているのはこのギルドぐらいだ。基本的に冒険者になるやつは自己責任。ギルドが冒険者を育てるなんて甘い考えはな………」


と、苦笑いするエスエさん。

こういうしないことすると周りから批判される。

多分エスエさんも周りから批判されながらもやってきたのだろう。


僕的にはこの考えは素晴らしいものだと思う。

いくら自己責任とはいえ、誰も死なないほうがいい。

全く死なないなんて、幻想かもしれないけど、それでも一人でも多く生き残れる方法があるならやったほうがいいに決まっている。


それをエスエさんに伝えたい。と思ったが子供が言うことじゃない。

言っても子供がいうことだから。と思われるだろう。

吐きたかった言葉を飲み込み、通されたのはギルドマスターの部屋を見て


「あの本ッ!!!!読んでいいですかッ!!!!!!」

「おおぉ!!?……いいけど、後にしろ……」

「分かりましたッ!!!!!」


何かを考えていたか忘れてしまった。そんなことより本だ!!

僕が持っていない本が、本棚に沢山ある!!

あれならきっと魔導書も一つぐらいは………


「おいおい…またニヤニヤしてるぞ……」

「今度はどれから読もうかなーですね」

「それは俺にも分かった………」


他の三人が何か言っていたが気にしない。

早く話を終わらせて本が読みたいと思い席についた。

来客を迎えるためのソファに僕とレナ。その後ろに立つアメストさん。

目の前には一人用のソファに腰掛けるエスエさん。


「改めてだ。俺はこのスチャータの冒険者ギルドマスターのエスエ·サトランだ」

「僕はミナルといいます」


「よろしくなミナル。

で、早速本題だが……レナ。こいつ、ステータス無いよな??」


一発でバレた!?

いや、隠していたわけじゃないけどなんで分かったの??

もしかしてさっきジィーと見られていたのって……鑑定されていた??


「えぇ。"鑑定眼"を持つ貴方ならハッキリ分かったはずです。

ミナルには、ステータスはないと……」

「………初めて見たぜ……ステータス確認が出来なかったから本気で見ようとしたが………この俺の鑑定眼でも見れなかった………」

「そうですか……もしかしたら、と、願ってはいましたが……」


もしかしたら、隠されていたら……かな……

それだったら嬉しかったかな〜隠蔽されていたり封印されていたり。

そんなやつだったら"もしかしたら"という希望が持てる。

でも完全にないのなら仕方ない。まぁ、ないものはないのだ。


「いいよレナ。元々持ってなかったし、今更ね」

「………そうは言いますけど、あるとないとではあまりにも違いが!!」

「そこまでにしておけ。下手な希望は逆に毒だぞ」


まぁ、ハッキリというなギルドマスターは。

それぐらい言ってもらえたら諦めつくからいいけど。

レナはまだ諦めきれていないようで表情が暗かった。


「ワリぃな。勝手に鑑定してしまってよ」

「いいですよ。鑑定したところで、って感じですけど」

「………お前は、諦めてるんだな」

「ステータスが無くても……」


そう言いながら僕はポゲートから魔導書を取り出してこう言ってやった。


「僕には魔導書があります」

「…………そうか」


納得したのだろう。

それ以上は聞かない雰囲気だったので自分からも言うのをやめた。


「で、だ。ミナルは冒険者になりに来たんだよな」

「自分で働けと言われたので」

「まぁ、その魔導書があればやれることもあるか………よし」


すると立ち上がったギルドマスターはこの部屋の奥にあるいかにも偉い人が使う机へ向かい、その机の引き出しからある羊皮紙を取り出して持ってきた。


「冒険者としての適性検査や、書類審査は無しだ。

いきなり実施試験を受けてもらうぞ。ここにサインしろ」

「えっ。い、いいんですか??」

「レナがお前を連れてきた時点でそうなってたんだよ。

コイツが相手を認めた。なかなか出来ることじゃねえ」

「それはミナルですから。当然です」


何がどう当然なのか……

言いたい言葉は飲み込んで、書類を確認する。

適性検査、書類審査、さらにさっき聞いた冒険者学校さえもパス出来る書類らしい。


「学校もパスなんですか??」

「お前をここで通わせた日には俺がレナに殺される」

「殺します」

「ちょっと、レナ………」


本気の目で言わないで欲しい……

でもまあ、簡単に冒険者になれるならそれはそれで……


「おいおい。いいのかよギルマスよ」


と、ここでさっきまで黙っていたアメストさんが入ってきた。

もちろんレナは鋭い目でアメストさんを睨んでいる。


「そんなことしたらコイツが周りからどんな目で見られるか、分かってるんだよな??」

「もちろんだとも。それを踏まえてこれから実施試験がある」

「………なら、いうことはねぇな」


えーーと、それ、かなりマズイんじゃないの??

言ってしまえば飛び級した生徒を周りが冷たい視線を送ったり、イジメたりするアレだよね。


それを踏まえて、実施試験??

………うわぁ〜嫌な予感しかない……


「あのそれって………」

「じゃ行こうか!」

「えぇ!?ちょっと!!」

「大丈夫ですよミナル」

「さっさと終わらせろよ 」

「ちょっ、ちょっとッ!!!」


なんで僕以外やる気なのさぁー!!?

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