隣町、スチャータ
「おお。ここが隣町なんだ……」
「はい。名前を"スチャータ"。大都よりも小さいですがそれでも一通りのお店や人が集まる町なんですよ」
まだスチャータの門の前まで来ていないがそれでも小高い丘から見える町並はとてもスゴイと感じた。
この異世界に来て初めての町。
ずっと小屋に引きこもっていたから外に出ることはなく本での知識しかなかった。まぁ、前世の記憶に似たような町並み、マンガやアニメでは見たことがあるけど実物はやっぱりスゴい!
前から思っていたがこの世界はよく設定にある中世ヨーロッパというやつ。
それがどんな時代なのかあまり気にしてはいない。
気にしたところで何かが変わるわけではない。
いつの時代も権力者がいて支配者がいて、それに苦しめられている人がいる。
それさえ知っていればいい。
巻き込まれないようにすればいい。
僕は、この世界で楽しく生きていければそれでいい。
「……ま、ま、まて、と……いって………る………はぁはぁ………」
「アメストさん、大丈夫ですか?」
「弛んでる証拠です。鍛え直したほうがいいですよ」
「テメェみたいな、化け物、と……一緒に……するな………」
ゼイゼイと肩から息を切らしているアメストさん。
全力疾走を2時間続ければこうなる。
むしろよくここまで付いてこれたと感動するほどだ。
流石に可愛そうだと思い体力回復魔法をかけつつ
「"ウォーター"」
飲水が必要だと約1リットルぐらいの水を作り出した。
それを球体にして宙に浮かせてアメストさんの目の前に運ぶ。
「どうぞ飲んでください。悪いものは入ってませんから」
「………疑わねぇよ……ったく……こんなもんまで……」
「文句があるなら飲まなくていいですが??」
「なんでテメェが決めんだよ!!飲むに決まってるだろうが!!!!」
本当にこの二人は仲が悪い。
レナに邪魔されないように素早く水を飲むアメストさん。
一気に飲み干し生き返ったのか顔色が良くなった気がする。
「助かった。ありがとうよ」
「いえ」
「………お礼、言えたのですね」
「マジでそのケンカ、買ってやろうか!あぁ!?」
「さぁ行きましょう」
「ちょっとレナ!!」
「無視してんじゃねぇ!!!」
本当にこの二人は仲が悪い。
この先、大丈夫なのだろうか………
そんな心配をしながら、後ろで言い合いをしながらもスチャータへ向かって歩く中で気づいた。
このスチャータを守るかのように囲む壁、そしていま向かっている門。
つまりはこれって……
「ねぇ、レナ。もしかして何かしらの身分証明みたいなものがないと入れない。とかじゃないよね」
「大丈夫ですよ。料金はいりますが」
「やっぱり……アメストさんは大丈夫でしょうけど、レナは??」
「私は………これが」
そういってポケットから取り出したのは一枚のカード。
そこにはレナのフルネームと、ランクAという表示があった。
「これがギルドカードというものです。
町に入る際に料金を払わなくていいので持っていました
もう、ギルドに戻る気はなかったのですが……こうしてミナルと一緒ならいいかと思いました」
「………レナ………」
「それにここは当日通っていたギルドではありませんから。
そう知り合いに会うことはないでしょう」
「……そうだね」
レナ。そういうことをいうとフラグが立つんだよ?
まぁ、そんなことをいっても何のことだと思われるので言えない。
そんな話をしていたらいつの間にか門の前までたどり着いていた。
そこには門番である二人の男の人が、武器を、槍を持って立っていた。
おお。ここはテンプレ通りなんだな〜
「身分証明出来るものは??」
「この子はありませんのでお金を。私はコレで」
「俺は、分かるよな??」
「騎士団の方ですね。貴女は……レナ·マスカルドッ!?」
突然大声で驚く門番。もう一人の人もレナのギルドカードを見て驚いている。……やっぱりレナって有名人だったんだ………
「はぁ……くれぐれも私が来ていることを広めないように」
「わ、分かりました!!!」
「よろしくお願いします。あとこの子の料金です」
「ありがとうございます!!!」
ただ料金を払っただけなのに感謝している門番。
やっぱりランクAというのはかなり凄いんだろうな………




