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異世界転生したのに……

「残念だが、この子にはレベルも、スキルも、それ以前に…………ステータスが……ない……」

「そ、そんなッ!!?」

「なら我が子はどう生きろというのだッ!!!」


そんな…声が聞こえてきた……

申し訳無さそうにする身嗜みのいい男性と、言葉を聞いて絶望する女性と、慌てその怒りをぶつける男性。


「……家から出さないことです……それがこの子を守ることになります……」


「……ど、どうして………」

「き、気をしっかりしろッ!!!」


小さい頃の、いや、生まれてすぐの出来事を覚えている。

いわば転生者というやつらしいが、その前の記憶を僕は知らない。

知っているのは"転生者であること""異世界に飛ばされたこと""なにかの特典をもらったこと"だけなのだが………どうやらハズレというやつらしい。


身嗜みのいい男性は何もできずにずっと気まずそうな表情をし、あとの二人はきっと両親と思われる。


「では、我が子は……ずっとこのままだというのか……」

「……残念ですが……」


「…………くそッッ!!!!」


そして、その時に向けられた視線を、冷たく恨むような目を僕は……………






………………………次に意識を戻したときには全く知らない場所だった。

どうやら僕は親に捨てられたようで教会で保護されたようだ。

目の前にはシスターらしき人が器に入っている白い液体を僕に飲ませようとしている。


えっ。と思いながらも抵抗も出来ず受け入れるしかなかった。

かなり……マズイ。しかしお腹が減っているので飲むしかない。

それにまだ言葉を言えない僕に意見を出すことなんてできない。


優しい表情で僕を見てくれるシスター。

その表情にどこか憐れみを向けられているように感じた……

どうやら本当に、捨てられたようだ……

そう自覚して、赤ん坊という自分は感情に簡単に負けてしまい、一日中泣き続けてしまった………


と、まぁ、翌日になれば泣きつかれて気も晴れた。

赤ん坊である自分はどうしようも出来ない。

ならいま出来ることをやろう。

やれること。つまりは成長することだ。

そしてこの世界のあり方を調べる必要がある。


そう決めた僕は今日もマズい白い液体を(後で分かったがヤギの乳)飲むことにした。





それから5年後。

歩く術を身につけ、言葉を喋ることまで出来るようになった。

しかし出来るのはここまで。なにせステータスがないからだ。


ステータス。この世界では必要不可欠なもの。

そこからレベルやスキルといったが表示されるのだが、まずそのステータスを認識しないことにはレベルやスキルという概念を自分に付与出来ないらしい。


つまりはレベルは上がらない。スキルも手に入らない。

ステータスも見えないからどれだけの力や防御があるかも分からない。

そんな奴を外に出してモンスターに遭遇すればすぐに死んでしまう。

もしかしたら誰かに殴られただけで重傷を負うかもしれない。

なにも分からない状態の僕は教会から離れた小屋に隔離されている。

シスターや神父以外の人には会えない。窓から見える僕と同じ子供達はあんなに外を走り回っているのに………


今日も今日で、小屋にある本を読むことにした。

唯一楽しみというのが山積みある本。まだ10分の1も読んでいない。

最近やっと()()()()()()()()()()()()()()()のでこうして読める本が増えた。


いま読んでいるのは一般的に魔導書と呼ばれるもの。

本に書かれた文字を読み解き、理解すれば誰でも使える魔法の本。

それは魔力といったものを扱わなくても、魔力を持っていれば使えるようだ。


ステータスがなくても僕にも魔力はあるようで、初めて読んだ魔導書から炎が出たときはビックリした。

すぐに炎を消したので他の本に燃え移ることはなかったが、安易に魔導書を読み解くことはしないようにした。


それでも魔導書を読むのは面白い。

言ってしまえば魔導書は魔法を顕現するために書き示された文字。

それはこの世界の法則に触れるようなものなので、この一冊で世界のあり方を知れるということになる。


例えばさっきいった炎が出た魔導書は、天から降り注いだ雷が木に落ちそこから踏み出された炎。それを手に纏わせて放つ。という内容だ。

わざわざ雷からの必要があるのか?という疑問はあるけど、イメージを具体的にするために必要なプロセスだと考えた。


なので魔導書の最後の文字まで読まずにいれば単なる本。

それで世界の法則や出来事のようなことが知れるのだ。

何もできない僕にはうってつけの暇つぶしである。


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