勝つための条件は?
「……啖呵切っちゃいましたけど、本当に大丈夫なんですか? あたし恋もまだなのに、淫魔に処女を散らされたあげくに快楽付けになんかされたくありませんよ?」
ユークリッドが姿を消した後、海羽は不安そうに俺に聞いてきた。
「大丈夫だ……と言いたいところだが、そもそも勝負の内容がよくわからないから何とも言えないな」
淫魔たちを倒すとはどういうことなのだろうか?
「心配しないで、私が知っているから」
日葵さんが俺たちを見つめた。
「月麦の力が発現したとき、淫魔のことについては全部調べたの」
それは非常に心強かった。俺たちは日葵さんの話に耳を傾けた。
「淫魔との戦い。それは夢の中で行われるものだから、そこではいくら肉体の力が強くても無意味なの」
俺の筋肉が生かされることはないみたいだ。しょんぼり。
「まずは女夢魔であるサキュバスについてだけど、彼女たちの誘惑を振り切って、大地くんの精力でイかせてあげること。それが勝つ条件だよ」
「精力でイかすって……まさか性行為!?」
月麦を助けるためとはいえ、それだけは誇り高き童貞として避けたい。
「ううん、その必要はないよ。自分の精力を放出してぶつけるイメージかな? 漫画みたいに、指先とか掌に力を溜めて、ばびゅーんって打ち出す感じ」
よかった、安心した。俺の童貞は守られるようだ。まだ大事に取っておきたい。
「あの……精力って何なんですか?」
海羽が日葵さんに遠慮がちに聞いた。
「精力は生命力に言い換えてもいいかもしれないね。どんなものかと言われると、何かをしようとするやる気……男の子だとあふれ出る性欲に近い感じなのかな? ごめんね、せっかく質問してくれたんだけど、これ以上は説明がしにくいの。大地くんみたいにイメージで理解してくれると助かるかな」
「うーん? あまりよくわかりませんね……」
そういえば月麦が、日葵さんの教え方はよくわからないみたいなことを言っていたが、その片鱗をかいまみたかもしれない。
「戦いのほうに話を戻すけど、相手はこちらを認識するとすぐに魅了魔法をかけてくると思うから、間違いなく相手が先行になると思う。精力を溜めるのってどうしても時間がかかっちゃうから……」
要するに、一度は魅了魔法を受けることは覚悟しておかなければならないということか。
「そして魅了魔法に打ち勝ったら、あとは精力を淫魔に向かって放つだけ。その精力が淫魔より上だったら相手はイっちゃうから、そしたら勝てるよ」
「ユークリッドに勝つにはどうしたらいいんですか?」
「インキュバス相手でも同じかな? 夢の世界では精力の強さで勝負するから、相手より上の精力をこぶしに込めてパンチするとか」
つまり、俺はあいつを思いっきりぶっ飛ばせるということだ。望むところである。
「それから、インキュバスの攻撃は幻惑による精神支配。もしかしたら魅了されるよりも正気を保つのが厳しいかもしれないから注意してね? まとめると、夢の世界であのインキュバスの男に勝つ条件は、たくさんのサキュバスの誘惑を超えて、その後に精力を使ってインキュバス打ち破ること。精力には限りがあるけど、インキュバスのところにたどり着くまでにたくさんのサキュバスを相手にしなきゃいけないから、途中で消耗しちゃって大地くんには厳しい戦いになると思う」
「それでも、俺がやるしかないんですよね」
「うん……私たちも力になってあげたいんだけど、契約も結ばれちゃったしできることはないと思う……ごめんね」
これは日葵さんと月麦が結んでいたサキュバスの契約と同じものなのだろう。
約束を破ってしまえば相手の奴隷になってしまうという制約付きの契約。
「それから負ける条件については……わかりやすいかな?」
「何となく想像はつきますが……」
日葵さんは俺の目をまっすぐに見て頷いた。
「サキュバスを相手にするときは、絶対におち〇ちんを勃起させたらダメなの」
まあ、そんな気はしてたけどね? というか、日葵さん今お◯んちんって言った!?
「そうなると大地くんは魅了されて、精力を全部吸い尽くされちゃうよ」
なんかしまらねえよなあ。
この鍛えた肉体がここで役に立ってかっこよく戦うのを想定していただけに、なんだか複雑な気分である。
「でも、大地くん。かわいい半裸の女の子に囲まれても興奮したらダメって、すっごく難しいことだと思うの。だって男の子だもん」
日葵さんは心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「大丈夫です! 俺は誇り高き童貞で、愛のある行為しか認めない人間ですから!」
「……こんなところで兄さんのそのポリシーが生きてくるとは思いませんでしたよ」
海羽は引きつった笑みを浮かべていた。
「それに日葵さんが言っていたように、俺は月麦の魅了魔法にだって耐えることができたんです。大嫌いなビッチの相手なんか楽勝ですよ!」
俺は力強く宣言した。
「うん、私も信頼してるよ」
「絶対に月麦を取り戻しましょう!」
俺たちは三人で、見つめ合いながらこくりと頷きあった
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