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海羽の怒り

「兄さん、いったいどういうつもりですか!」


 大学から帰ると、海羽が俺の家の中で待っていた。


 海羽は感情をき出しにして、怒りを隠そうともしなかった。


「今朝、つむつむからあたしに電話がかかってきました。兄さんに振られちゃったと、電話の向こう側でわんわん泣いていました!」


 海羽はそう言い、俺に詰め寄ってきた。


「兄さんがつむつむのことなんか嫌いだから振ったというのなら、あたしは別に構いません。それが恋愛というもので、いつでも報われるようなものじゃないからです。でも、兄さんは違いますよね?」


「……海羽に俺の何がわかるんだよ」


 その言葉は、俺のくだらないプライドがさせた最後の抵抗だった。


「わかるに決まっているじゃないですか! 兄さんは大事な家族なんですから! 何年一緒にいたと思っているんですか?」


 そしてそれは、海羽の前では無力で……ただかっこ悪かった。


「つむつむのこと、好きだったんですよね? でも、それを認めるのが怖かったんですよね? ごまかさないでくださいよ!」


「……違う」


「違いません! 好きだと認めて振られたら、また傷つくかもしれないって思って、自分でその気持ちにふたをしようとしたんでしょ! そして自分の保身のために、兄さんはつむつむの気持ちから逃げたんです!」


「……俺はそんなつもりじゃ!」


 傷つけるつもりなんか、なかったんだ。


「そんなつもりじゃなかったと言えばいいと、本気で思っているんですか? つむつむがどんな気持ちで、兄さんに想いを告げようとしていたのかわかりますか? 昔、本気で女の子を好きになったことのある兄さんならわかるでしょう!」


 感情がたかぶって泣きそうな声で海羽は言った。


「兄さんはつむつむが勇気をだして伝えようとしてくれた気持ちを嘘だと、兄さんを騙すために言ったのだと決めつけて、最後まで告白すらさせてあげなかった! それは過去に、兄さんの気持ちをもてあそんで賭け事に使っていた人たちがした事と同じくらいひどいことです! 兄さんはそれをつむつむにしたんですよ!」


「違うんだ、俺は……」


 しぼりだした声は震えていた。


「だから、あれほどあたしは言ったじゃないですか! 選択を間違えたらだめだって、つむつむを泣かせたら承知しないって!」


 海羽はついに泣き出して、俺の胸元を両手で掴んだ。


「兄さんがつむつむのことを傷つけたんです! あたしは兄さんがこのまま何もせずにいるなら、兄さんのことを絶対に許しませんから!」


 海羽はそう叫ぶと、俺を突き飛ばして家から飛び出して行った。


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