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性欲に負けた男の末路

「ごめんね。きみの気持ちはうれしいけど、付き合うのは無理かな」


 それは俺、入之波しおのは大地だいちが高校二年生のときだった。夕方の屋上で、勇気を振り絞った俺の一世一代の告白は、実ることなく無残にも砕け散った。


「そういうわけだから、もう行くね」


 呆然と立ち尽くしている俺を置いて、彼女はさっさと屋上から出て行ってしまった。


「うう……さよなら、俺の初恋」


 彼女を好きになったきっかけは単純だった。


 勉強はできるけど友達が少なく、陰キャまっしぐらだった俺に優しく話しかけてくれて、鞄に着けていたアニメキャラクターのラバーストラップを見て


『可愛いねそのキャラ、何のアニメなの?』


 なんて自分の趣味を受け入れてくれるような発言をし、挨拶の度にボディタッチなんかされたりしたら、思春期真っ盛りだった俺の心はあっけなく陥落かんらくしてしまった。


 それにあの短いスカートと、高校生になって大きくなり始めた胸の谷間を見せつけるように上のボタンをはずした姿は、男子にとって目の毒である。


 見ないようにと思っても、俺の視線は夏の虫が光に集まっていくようにそこに吸い寄せられていった。


 彼女はいわゆる、オタクに優しいギャル系の女の子だった。


 振られてやることもなくなった俺は、まだ教室に置きっぱなしになっている鞄を取りにいくことにした。


 明日からの学校生活が憂鬱ゆううつだ。


 告白したことで、彼女とは気まずくなって疎遠になるのだろう。


 あの優しさに触れられなくなった俺は、これから何を楽しみに学校に通えばいいのか……。


 そんなやるせなさを感じながら教室の扉を開こうと引き戸に手をかけとところで、中から女の子たちの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。


 涙に濡れた顔を見られたくなかった俺は扉から手を離し、中の様子をそっと覗き込んだ。どうやらギャルの女の子たちが二人で何かを話しているようだ。


 そのうちの一人は、ついさっき俺が告白した女の子だった。


「あのオタク野郎、お前が話しかけるようになってからたった一か月で告白してきたのか? マジありえねえ……行動力だけは一人前にあるのな」


「ほらね、だから言ったでしょ? オタクなんてちょっと優しくして、胸元とか見せて誘惑して、好きな漫画のキャラクターの話を聞いてあげたらすぐに落ちちゃうって。告白のときに緊張して震えながら『あなたが好きです』って愛のセリフなんか叫んじゃってさ、あわれだったわ~」


「お前も悪い女だよな、いくらなんでもガリ勉オタクが不憫ふびんだわ。絶対に報われないのに恋なんかしちゃってさ」


「一緒になって笑っているアンタも同罪よ。とにかくこれで賭けはウチの勝ち! ほら、はやく」


「わかったわよ……くっそ、三か月は告白してこないと思っていたのにな」


「まいどあり~」


 その女は財布から五千円札を抜き出し、嫌そうに差し出していた。


 俺は自分の耳を疑った。


 あの子が今まで俺に優しくしてくれたのは、俺がいつまでに告白してくるかを賭けていたからなのか? そして今日、俺はまんまと作戦に引っ掛かり告白をして、賭け事を成立させてしまったというのか?


 自分の道化っぷりに頭が痛くなってくる。


 確かに俺は性欲に抗えずにあの子に惹かれてしまったのは認めよう。


 でも、思春期の男だよ? それの何が悪いの? ここまでひどい仕打ちが待っているなんて思いもしないじゃん?


「ちくしょう、失敗した! あんなビッチに惚れるなんてあってはならないことだったんだ!」


 やはり恋愛をするならば、むやみに肌を露出したりしない清楚で可憐な女の子以外ありえない。自分のことを大事にしていて絶対に処女。


 なおかつ俺のことを受け入れてくれて、隣で優しく微笑んでくれるような子を探すんだ!


 男を誘惑してもてあそぶようなビッチは今後一切お断りである。


 だから俺は、幾重いくえにも信頼関係を結んだその先に成り立つ、愛のある行為しか認めない誇り高き童貞になってやる!


 悔しさであふれ出る涙で制服をびちゃびちゃに濡らしながら、俺はそう誓ったのだった。


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