プロローグ 家庭教師とサキュバスと
彼女が欲しい。
誇り高き童貞である俺、入之波大地はそれを強く願っていた。
これは俺のような若い男には自然な感情だろう。
だけど、女なら誰でもいいという訳ではない。 みんなもこの気持ちをわかってくれるかと思う。
きっと君たちの頭の中にも、理想の女の子というものは存在しているだろう。
ちなみに、俺の理想とする女の子は、清楚で可憐で身持ちが固く、今まで誰とも付き合ったことのない美少女である。
当然、処女以外はあり得ない。
簡単に股を開き、純情な男をその身体で誘惑して弄び、ヤリまくっているようなビッチは死んでもお断りだ。
俺は生粋のユニコーン男子なのである。
俺がここまでそれにこだわるようになったのは、凄惨な過去が関係しているのだが、それはいったん置いておこう。
そういうわけで、俺は少しでも理想に近い『清楚』で『可憐』な『処女』の女の子をずっと探し求めていた。
そして、その人の隣にいても恥ずかしくないように、必死で勉強をし、身体も鍛えて、清潔感が出るように身だしなみを整え、がんばってここまで努力してきた。
元々がオタク気質かつ陰キャな俺も、理想の彼女を手に入れたくて、できることをしたのだ。
全ては、理想の女の子とイチャラブしながら、幸せなキャンパスライフを送るためだ。
……なのに、どうして俺の人生に深く絡んでくる女は、こうも理想からとっぱずれている奴が多いのだろうか?
大事なことなのでもう一度言おう。俺の理想の女の子は『清楚』で『可憐』な『処女』である。
しかし今、俺の目の前にいる女は、制服の胸元のボタンをはずしてぱっくりと開き、超絶短いスカートでふとももを晒し、前屈みになって胸の谷間を見せて、パンツが見えるか見えないかのギリギリのラインまでスカートを持ち上げて、俺を性的に誘惑してくるのだ。
このクソ女は菟田野月麦。
来年に受験を控えた高校二年生で馬鹿。
家庭教師のアルバイトを始めた俺の、初めての生徒である。
「今日こそ、絶対にあんたを魅了してやるんだから!」
ヤツはそう言いながら俺に敵意を持った視線を向けてくる。
俺がこいつに魅了されてしまったら、家庭教師である俺をクビにするらしい。正直、意味がわからない。
というか、こんな生徒こっちからお断りだ。
俺だってこんなところさっさと辞めてやりたいが、実はこの仕事はお金以外にも俺に莫大なメリットがあるから続けている。それもまあ、後で語ろうか。
話を戻そう。
さて、俺の目の前で肌を惜しげもなく晒しているこの女、なんとサキュバスなのである。
夜な夜な男とヤリまくって、精を搾り取っていくと言われているらしいアレである。
お前は何を言っているんだと君たちは思ったかもしれない。
確かにその通りだと思う。だが、これが事実なのだから仕方がない。
こいつはサキュバスで魅了魔法が使える。
そして、その魔法によって魅了されてしまうと、本人の意志と関係なく彼女に従属し、なんでも言うことを聞いてしまうようになってしまうというのだから恐ろしい。
夢魔と言われて語り継がれているだけはある。
さあ、大事なことなので何度でも言おう、俺の理想は『清楚』で『可憐』な『処女』の女の子だ。
こいつが俺のストライクゾーンには1ミクロンもかすっていないことがお分かり頂けただろうか?
投げられたボールは大暴投、バッターである俺が打つどころかキャッチャーも取れずにバックネットも超えて行ってしまった。
俺はビッチな女はお断りなのだ。
こんな女の誘惑に耐えるために今まで努力を繰り返してきた訳では断じてない。
なのに、なのに……本当に、どうしてこうなった!?
それを今から語るとしよう。
これは誇り高き童貞である家庭教師の俺と、勉強嫌いのサキュバスとの、己のプライドと誇りをかけた戦いの記録である。
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