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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第3章 アンダー
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「どう思うよ、あいつら」

「まあ、よろしいのではないですか」

「てことは、招待してやるか?」

「ゲームがよりおもしろくなるかと思います。特にあの魔導師は」

「いいねえ。こいつは久々に上がりそうだ」




 ミグは今日こそはと意気込んで、崖っぷちアパート前に陣取っていた。四日前、給付金減額の危機から救ってくれたシェラはあのあとすぐアルバイトに行ってしまい、まだきちんと礼を言えていない。日中は南区の魔法陣学校へ通うシェラだから、その放課後を狙って待っているのだが、三回連続アルバイトを理由にフラれている。

 礼を言うどころか、いい加減迷惑に思われているんじゃない? とはテッサの談だ。ミグもうすうすそんな気がしないでもない。

 それにシェラが本当に〈鬼灯デモンライト〉を放った魔導師かどうかもわからないとも幼なじみの姫は言っていた。テッサがそう思うのも無理はない。シェラが礼を拒みつづけていることがひとつにある。そしてもうひとつの理由は首長レゾンを追い払った手管だ。

 底抜けに明るく振る舞い、純粋無垢、人畜無害だと思っていた少年が見せたしたり顔は今もミグの網膜に焼きついている。シェラはただ口がうまいだけで、自宅前でいつまでも問答している輩をその巧みな話術で片づけたに過ぎないかもしれない。

 嘘か本当か、少年は学校の成績はドベだとも語っていた。


「でも、助かったのは事実だし」


 礼儀をわきまえているテッサは、二回断られた時点で身を引き、また〈バックトゥバック〉の手伝いに勤しんでいる。自分もそろそろ諦めるべきか、と考えため息をついたミグの耳に、ごりごりとなにか引きずる音が聞こえてきた。

 通りに目を向けると、住宅街の奥から片腕で木材を引きずるヴィンが歩いてくる。左目の義眼〈レティナ〉を失って布で半分隠れた顔を上げ、ヴィンは半球の屋根が辛うじて見える首長官邸に向かい舌打ちした。


「早まるのはやめよう!」

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