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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第2章 雨降らしのアプリーシア
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 そのせいか、思ったよりも高くヴィンの体を飛ばしてしまう。しかし彼は、過ぎた勢いもうまく体でいなして自分のものとし、まっすぐテッサとナキに向かって飛んでいった。

 ミグは急いで〈防護壁シールド〉を解除する。それと同時にテッサの〈水護陣バブル〉も切れた。息を呑むミグが見つめる先で、悲鳴とともに親友と少女の体が落下する。そこへ下から接近してきたヴィンはせつな、衝突したかに見えた。だがふわりと放物線を描き、上昇から下降へ転じたヴィンの腕にテッサとナキはしかと抱きとめられていた。


「やったあ! テッサ! ナキ! よかったよおおお! ……あ」


 安堵と喜びのあまり跳ね回っていたミグは三人を魔法で受けとめることを忘れ、水没する音で我に返った。慌てて〈防護壁シールド〉で掬い上げようとしたものの、飛び過ぎた三人は射程範囲外へ行ってしまったようだった。

 魔法も届かずおろおろしていると、ヴィンが水面から顔を出した。その周囲にうっすら〈水護陣バブル〉の光が見えて、どうやらテッサが魔法をかけ直したらしいと知り胸をなでおろす。

 テッサに抱えられたナキの姿も確認できた。三人は水色の泡の中を歩いて川の流れに逆らい、無事に岸まで辿り着いた。

 こちらを見上げたテッサにミグは笑顔で手を振った。しかし親友はなにかに気づいたヴィンに肩を叩かれ振り返る。ミグもヴィンが指さす上空へ目を向けた。

 その瞬間、目が痛むほどの閃光とともに雷鳴が轟く。それはミグの魔法によって腹を裂かれたアプリーシアの怒声だった。

 ミグは目を疑った。アプリーシアの形が変わっていく。腹部の裂け目が広がり、そこから新たな足のひだが生え、尾ひれからはまるで頭部のような触覚が湧き出している。やがて完全に切断された腹部はしかし、青い尾ひれとしてもう機能していた。

 そこにはひと回り小さくなったアプリーシアが二体いた。

 扇ぐように尾ひれを使い、旋回したアプリーシアの頭部は気のせいではなくミグに向いている。逃げなければ。本能がささやいた時、なにか弾丸のようなものが飛んできてミグの左右に落ちた。とっさに頭をかばったミグの耳に、べちゃりと粘着質な音が届く。

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