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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第2章 雨降らしのアプリーシア
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 完成した魔法陣を三回叩くと、円環から水色の幕が広がりテッサとナキを包み込んだ。〈水護陣バブル〉は水中でも呼吸ができ、球体の中で歩けば移動もできる防御魔法だ。たとえ胃液が競り上がってきても身を守れる上に酸素の心配はない。

 だがミグの〈防護壁シールド〉と比べると耐久値は劣る。加えて、胃液に絶えず攻撃されている状態では長くもちそうにない。テッサはいつでも魔法をかけ直せるよう祈るようにごぼうをぎゅっと握り締めた。

 その時、テッサの〈水護陣バブル〉ごと包み守って青の壁が出現する。


「ミグ!」




「捉えた!」


 半透明の体が不幸中の幸いだった。ミグはアプリーシアの体内に捕らわれたテッサとナキを、うまく〈水護陣バブル〉を壊さず囲えた手応えを感じて破顔する。


「まだだ。〈防護壁シールド〉張れたって姫さんたちはどんどん遠ざかっていくぞ。手出しできなくなる前にどうにかして止めねえと」


 アプリーシアを追いながら後頭部をはたいていったヴィンに、ミグは「わかってる!」と言い返す。ちょうどその時アプリーシアがゆったりと旋回して、頭を南に向けた。

 風向きが変わったのだ。漂うように空を泳ぐアプリーシアにとって、風上に進むことは難しい。ミグは急いで橋に駆け戻り、欄干へかじりついた。アプリーシアの動きとその真下の状況を交互に見やる。

 風に押し流され川に差しかかっている。下には建物も人もいない。

 ミグは発動中の魔法陣にすばやく円と線を描き加えていく。魔力の繋がりがいつもより薄かった。テッサとナキがもうすぐミグの射程範囲外に出ようとしている。そうなっては親友が害獣に連れ去られるのを、ただ見ていることしかできなくなる。


「させない……!」


 ミグはできあがった魔法陣を二回叩いた。距離が開いたため、通常より大量の魔力を注いで強引に発動まで持っていく。

 もう一度叩こうとして、せつな、ためらった意気地のない手を思いきり円環にぶつけた。三重の魔法陣がぎゅるりと回り光の火花が散る。

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