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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第2章 雨降らしのアプリーシア
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「あの、すみませんが私は火番できないです……」


 ひょいと眉を上げたジェンを見て、テッサがすかさず補足を入れる。


「ミグは諸事情で攻撃魔法が使えないんです」

「帝国の戦闘艇とやり合ったのに?」


 テッサに確認を取るジェンの言葉を聞いて、ミグは思わず幼なじみを凝視した。確かに戦闘艇を相手にしたが、やり合ったと言っては語弊がある。ミグはただ砲撃を防いでいただけだ。

 ところがテッサは「それは本当です」と胸を張った。


「しかも防御魔法だけで完封したんです」


 つんと鼻を高くして親友は誇らしげに語る。ジェンが微妙な顔をしていることには気づいていない。完封は一瞬かっこよく聞こえるかもしれないが、それはつまり、

「お前ぼうぎょ魔法しか使えないのかよ」

今まさに頭を過った言葉が下から聞こえてきた。

 ジェンの足にまとわりつく男の子がひとり増えている。生意気そうなブラウンの目や鼻の形はジェンとよく似ていた。


「失礼ですね。治癒魔法も使えます」


 テッサが顔を突き出して食ってかかる。勝ち気な男の子はたじろいでジェンの後ろに隠れたと思ったら、反対側から頭を出してミグをにらみつけた。


「けっきょく、よえーじゃん。だっせえ」


 無邪気な言葉が心をチクリと刺す。すかさずジェンの平手が男の子の黒髪をはたいた。うずくまって痛がる姿を、こはくの目が心配そうに見つめて「にいちゃん」と呼びかける。

 うちの子がすみません、と謝ったジェンは、黒と茶色の小さな頭に手を置いてミグに紹介した。


「こっちの生意気なちびが長男クールで。人見知りしてるのが次男のシャル。ほら、あいさつ」


 母親によく似た黒髪に褐色の肌を持ったクールはそっぽを向き、母や兄よりは色素の薄い茶髪と小麦色の肌を持つシャルは素直にぺこりとおじぎした。ジェンは兄の態度をたしなめるが、クールは聞こえないふりをして弟シャルを誘い走り去る。


「根は悪い子じゃないの」


 そう耳打ちしたテッサにミグは苦笑いを返したが、口角が重く、すぐに垂れ下がった。

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