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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第2章 雨降らしのアプリーシア
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 元より血塗られた道を歩いてきたとしても、これ以上汚れることをきっと義父は望んでいない。ドラゴンから受けた毒を完治することができず、結局最期までなにも返せなかったことを悔やんでいた。

 今、再び恩返しの機会が巡ってきたのなら迷いたくはない。たとえそれが、義父をこの手にかけることであっても。


「望みは薄いぞ。俺も腕斬られてすぐ気を失ったからな」

「それでもいい。今はこれしか手がかりがないの」


 思わず前のめりになって訴えるミグから、ヴィンは迷惑そうにしかめた顔を背けた。同時に、手がパッと払われてミグははじめてヴィンのひざに触れていたことに気がついた。自分のことながら、その必死さを不思議に思う。

 しばし、乱雑に髪を掻きながらうなっていたヴィンは、ようやく重い口を開いた。


「めんどうごとに巻き込まれるのはごめんだからな」


 そのひねくれた返しをミグは了承と受け取り、飛び上がって礼を言った。そんな自然と反応する体を、一歩引いた視点にいる自分は小さな驚きとともに眺めていた。そして気づく。

 私はなにかにすがりたかったのかもしれない。


「じゃ、金寄越せ」


 鼻先に突き出された手がミグを我に返らせる。希望と期待にふくらんだ胸に一発で風穴をあけた無粋男は、遠慮の欠片もなくふんぞり返っていた。目の前の手をバチンとやってやる。


「お金なんて持ってません!」

「勘違いすんな。今月の酒代だよ。もらってるだろ、あの秘書から」


 やれやれ、と叩かれた手を振って呆れてみせるヴィンに、ミグは言ってやりたい文句が沸々とあふれてきた。

 ミグとテッサとヴィン、大人三人で月二〇万オーツの生活費はけして余裕があるとは言えない。協力して節約が必要だと説明しても、この金髪男はパンより酒だと言って割高な居酒屋を渡り歩いている。

 三等分した六万オーツの範囲で大人しくやりくりしてくれればいいものを、なくなったらすぐ無心に走る始末だ。しかも最悪なことにヴィンのたかり先はテッサだ。「たかが数万オーツでなにをカリカリしているの」とは、あっさり追加融資を許したテッサが怒るミグに向けて放ったひとことである。

 王族勘定って怖い。

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