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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第2章 雨降らしのアプリーシア
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 遠慮がちに問いかけたミグをちらりと見ただけで、ヴィンは特に表情を変えない。いや、残った隻眼にはなんの感情も映していなかった。


「〈網膜レティナ〉だ」

「れてぃな?」

「義眼型の魔動機の一種だよ。移植者の魔力を使って、そいつが見たもんを記録できるんだ」


 ゼクストの記録係とはそういうことかとミグは納得する。すると、ふいにヴィンが盛大なため息をついた。


「ったく。戦争のどさくさに紛れてとんずらしたら〈レティナ〉売って金にしてやろうと思ってたのに。目が覚めたら消えてやがる。あのヴォルって秘書に問い詰めても知らねえって言うが、胡散くせえよな」


 その意見には激しく同意だ。ミグは力強く何度も首を縦に振った。

 その時、ひらめきが脳裏で瞬く。ミグにはちょっとでも魔法を使おうものなら口うるさく怒られる他に、秘書ヴォルと首長レゾンには大きな不満があった。いそいそとヴィンの前に回り込み、訝しむ彼にひざを詰めて正座する。期待を込めて、隻眼をずいっと覗き込んだ。


「その〈レティナ〉にゼクストの行方が映ってないかな」

「なに。お前も知らないの」


 ミグは大きくうなずいて、自分の首に触った。


「ゼクストに首絞められて気絶した。気づいたらリゲルの病院だったから、あとのことはわからない。ヴォルさんに聞いてもわからないって言われる」


 胡散くさい秘書の言うことを鵜呑みにしたわけじゃない。一番早くベガ国に駆けつけ、その後のプロキオン帝国との戦争にも、戦後処理にも、率先して関わっている首長レゾンの右腕だ。ゼクストが逃走していたとしても、なにも掴んでいないはずがない。

 ただ、彼らにはミグに話す気は一切ないのだ。帝国出身の、得体の知れない手術を施された、間者の可能性も捨てきれない相手には当然の判断だ。だがミグはそれでは収まらない。


「私はゼクストを追わなくちゃいけない。どうして生き返り、あんなに変わってしまったのか知りたい。それに……」


 ミグはひざに置いた手を強く握り込んだ。


「今もどこかで誰かを傷つけているなら、私が止めないと」

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