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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第2章 雨降らしのアプリーシア
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「ああ、ヴォルさん朝から元気だよねー! だいじょうぶだよ。その時はもう起きてたから」


 あのくどくどした態度を元気で片づけ、シェラはおもしろがって笑う。気持ちいいくらい無垢で明るいシェラを前に、ミグは歯を剥き出していた自分が恥ずかしいやらこの年下の少年を拝みたいやらで心が忙しなかった。


「ごめん、ミグ。もういいかな? 俺今日まだ宿題やってないから、早めに学校行ってやりたいんだ」

「あっ、ごめん! 最後にひとつだけ……! 昨日の夜、アパートの周りでなにかの魔法見た?」


 若葉色の目がくるりと上向いて記憶をさかのぼる。「んー」と軽いうなり声が途切れてシェラが口を開くそのせつな、扉の隙間から誰かの咳が聞こえた。


「なんにも見てないよ!」

「そう。ありがとう」


 にぱっと笑ったシェラにミグも微笑みを返す。学業に励む少年はそのまますばやく玄関扉の施錠をして、元気よく共用階段を駆け上がっていった。


「んー」


 次に考え込んでうなったのはミグだった。すぐ自室には戻らず、通路の奥へと足を向ける。その先には共用のトイレと風呂場があった。そのため地下二階の間取りは上の階より狭く作られている。だがその分、南区に向かって競り出すバルコニーは一番広く設計されていた。

 トイレと風呂場の脇には火起こし用の薪置き場があった。

 電気や水道といったライフラインの魔動機化は近年、急速に普及しているといってもそれは富裕層の間だけだった。魔動機の動力となる魔石は、まだまだ一般市民が手を出せる価格で取り引きされていない。

 長く、魔法とはドラゴンだけが扱える特別な力だった。その魔法陣の知識を人間が読み解き、扱えるようになったのはつい最近と言っても過言ではないほど歴史は浅い。

 だから一般庶民のミグが朝起きてまずすることは、近くの井戸まで水を汲みに行くことだ。そして温かい料理や風呂を用意したければ、地下二階から薪を抱えてこなければならない。

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