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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
終章
350/352

350

――そのしつこさはまさしく父親ゆずりなんだな。借りも返されたことだし、もう少しお前とゆくことにしよう。


 なんのことやら、ミグにはよくわからなかった。だけどゼクストと似ていると言われるのはくすぐったくて、この上なくうれしい。

 この絶対的存在とどこまで行けるのか不安がないわけではない。でも、どうやらゼクストを気に入っている魔石と父が示した道を歩いている間は、うまくやれそうな気がした。


「次の便は……六分後か」


 山の下ホテル停留所の時刻表と、いっしょに設置されている時計を見比べてミグはひと息つく。ちょっと疲れを感じてそばのベンチに腰かけた。

 元々脆弱な足だったが、〈名もなき石〉と無理な同化をしたせいで疲れやすくなっていた。ミグは一時的なものだと信じているが、太古の魔石を心臓に持つ人の前例がないのでなんとも言えない。

 ミグがへばってももう気遣ってくれる声も、脇に抱えてくれる腕もないしなあ、と頬杖をつく。

 そうしてしばらくぼんやりしていると、後ろからやってきた人物がミグの目の前――時刻表の横に立った。背中を向けた男は、ミグが静かに息を呑んだことなど知らないだろう。

 遥か下から吹き上げてくる海風に余った袖と短くなった金髪を揺らして、ヴィンは佇む。隻腕には網かごを下げていた。ジェンから商店街まで買い出しを頼まれたに違いない。

 ミグは風に棚引くなにも入っていない袖をじっと見つめた。

 〈名もなき石〉に臓器を再生してと言った時、あわよくばヴィンの片腕も戻らないかと期待した。しかしそう都合よくはいかなかったらしい。テッサとヴィン、ふたり分の臓器を再生するのに想いを使いきってしまった。

 彼はこれからテッサやシェラに髪を結ってもらうのかな。

 ふと過った思考をバカバカしいと振り払う。今までだって別にミグひとりが結っていたわけではないし、普通に考えれば長くなってきたら床屋で散髪してもらうだろう。

 ああでも、テッサもシェラも顔さえ知らない床屋の主人にまで嫉妬してしまう。もう、そんな感情を抱かれる義理さえヴィンの中には残っていないのに。

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