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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第7章 反撃
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335

「だが状況は最悪だ。シェラは魔力を使い切ってもう戦えない。ミグもノインの術中にはまって身動きが取れなくなってる」


 ジタン王が重々しい口調であとを引き継ぐ。


「ノインはお前たちを狙っている。仲間の死でミグを精神的に追い詰めるつもりだ」


 テッサが身を乗り出してすかさず父に問いかけた。


「私たちは今どういう状況なの」

「ミグの治癒魔法で毒の進行を食い止めてる状態だ。戦いながらではそれが精一杯だろうな」

「構わねえよ」


 ジタン王の言葉尻を奪うように口を挟んだヴィンに視線が集中する。しかしヴィンはひるまず、ゼクストをひたと見据えた。


「ぐうたに加勢しろって叩き起こしに来たんだろ。望むところだ。早くこの世界の出口を教えろ」


 ミグが気がかりで少し乱暴な口調になるヴィンを、ゼクストは笑みひとつで受け流す。その目には試すような光があった。


「いいのか。〈女神の祝福(ララ・セラピア)〉から出たら、毒があっという間に回るぞ」

「覚悟の上ですわ、ゼクストおじ様。私たちはけしてミグをひとりで戦わせません」


 そう答えたのはテッサだった。ジタン王は悲痛に眉をひそめ、引き止めるような声で娘を呼ぶ。しかしテッサの覚悟を前に、うつむいた父王はそれ以上の言葉を呑み込んだ。


「……ノインは竜の子だ。やつ自身もドラゴンに匹敵する力を持っている。テッサ、ヴィン。お前たちの覚悟に俺たちも応える」


 そう言って立ち上がり友ジタンの肩を叩いたゼクストは、地面に向かって手をかざす。迷いを晴らすように頭を振ったジタン王もゼクストにならった。


『〈杖化タクトアップ〉』


 ふたりの声が重なる。とたん突風が吹きあたりの木々が恐れ戦くように仰け反った。草原はまるで海のように波打ち、その円形の波紋の真ん中から光りはじめる。

 光と風から顔をかばい目を細めたヴィンは、地面の中から二振りの武器が生まれる瞬間を目撃した。

 ゼクストの手に吸い寄せられたのは、半月の刃が美しい紫の長斧だ。そしてジタン王が従えるは、海をそのまま閉じ込めたような深い青に染まる二又の槍だった。

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