表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第7章 反撃
333/352

333

 神経系をまひさせる毒だ。ノインの髪をわし掴む指先の感覚が遠くなっていく。心の奥で魔石がまずいと叫んだ。ミグはがむしゃらに相手の肩を殴りつけるがびくともしない。


「うっ、あ……!」


 ミシリと骨のきしむ音を立ててあごを掴まれた。強引に目を合わせるよう持ち上げられた視線の先で、ノインはべったりとミグの血がついた口を笑みで彩る。


「お前の仲間を目の前でひとりひとり殺そう。そうすれば私に下る気にもなるだろ」


 親指の腹でうっとりとミグの唇をなぞったノインの目には、憐れに震える実験動物が映っていた。




「もしもーし。毒に侵されてるとこわりいけど、起きてくれや」

「ふざけんな。そんなくそ以下野郎このまま永眠させとけ。俺のかわいいかわいい娘に恥かかせやがって。なに様のつもりだ」

「おお、こわっ。お前それでも元王様か。そろそろ子離れしないとテッサちゃんがかわいそうだぜ」

「お前にだけは言われたくないな! 魂になってまでミグにつきまとってたやつによ!」


 なんだか外野がうるさい。やかましさを追い払おうとしてヴィンは寝返りを打った。

 ところが思わぬ衝撃に尻を強打して目を見開く。ベッドで寝ているつもりだったが、目の前には新緑萌える森が広がっていた。

 尻もちをついたヴィンの周りには桃色や黄色の花が草葉の間で揺れている。さあっと花畑をなでた風に乗って、白い羽を持ったチョウが鼻先を舞っていった。

 なにが起きているのかわからず呆然とするヴィンを、覗き込むようにして男がしゃがんでくる。

 浅黒い肌に短く刈り上げた銀髪がよく似合う男だった。筋肉が服を押し上げる大柄な体格に、左目に走る傷痕がただならぬ雰囲気を放つ。しかしヴィンと視線が合った青い目は、厳つい見た目に反してにかっと笑った。


「ぼうず、プロキオン帝国の実験施設以来。いや、ベガ国の戦場以来だな」

「ゼクスト、将軍……」


 ヴィンが名前を呼ぶとゼクストはますます笑みを深めた。

 ゼクストの横にもうひとり男がいる。桃色の長い髪を肩に流した凛々しい顔立ちの男だ。ベガ国国王ジタン。ヴィンは彼を戦場に赴く前の作戦指令書で見かけていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ