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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第7章 反撃
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 それは〈防護壁シールド〉に触れる間際に四散し、ねっとりと壁に張りつく。魔法に込めたミグの魔力を、白い煙を噴き出しながら溶かしはじめた。


「あの翼っ、硬過ぎるよ!」


 まとわりつく毒を恐ろしげに見ながらシェラが叫ぶ。確かにドラゴンの翼はどの部位よりも強固のようだ。並大抵の攻撃では歯が立たない。


「翼を破る方法……」


 それが見つからない限り勝利はない。そう考えたミグのひとりごとだったが、思わぬところから返事があった。


『ドラゴンは契約者を必ず守る。その習性を使え』


 〈名もなき石〉だ。ぽかんと見つめてくるシェラの視線に気づき、ミグは慌てて口を押さえた。ひとりごとの会話なんて自分もまだ慣れないのに、人の目があると余計に恥ずかしい。

 魔石が喋ったの、と言ってみたところで理解されるかわからないが、ミグはとりあえず笑みで誤魔化した。


「ええと、じゃあシェラ、もう一回さっきの撃って」

「えっ。でも効かないよ」

「いいのいいの。攻撃が目的じゃないんだ」


 シェラはきょとんと首をかしげる。少年の背後を伝う毒の粘液がそろそろ流れ落ちそうだ。ノインからこちらの動きが見える前に、とミグはすばやくシェラに耳打ちする。

 そして身を離すと同時にあたりに煙幕を敷いた。


「よろしく!」


 弾む声でシェラの肩を叩き、〈防護壁シールド〉を解除して走り出す。気遣わしげにミグを呼ぶシェラの声が尾を引いた。

 返事の代わりに〈拡散ディフュージョン〉の魔法陣を少し離れたところにひとつ置く。それを見てシェラも重ねるように〈不死鳥の矢(フェニックスアロー)〉を描きはじめた。

 狙い通り、ノインは魔法陣の光を頼りに〈蛇ノ風(ヴァンヴィペール)〉を撃ち、攻撃しつつ煙を払いにかかってくる。けれどそこにシェラもミグもいない。

 竜巻を横目に魔法陣を完成させたシェラは、炎の弓矢を射った。それはミグの〈展開ディフュージョン〉を通過して扇状に広がる。

 再びノインを狙うその攻撃はしかし、先ほどよりも矢尻が上向いていた。翼で防ぐよりも下方へ避けたほうが容易だった。

 そうドラゴンに思わせるための攻撃だ。

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