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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第7章 反撃
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 〈名もなき石〉の魔力を感じ取る力は、視覚よりもはっきりと存在を認識することができた。


「いいよ。いっしょに行こう」


 ミグは目の前に迫った〈五聖塔ルクス・ペンタグラム〉の白壁に向けて、指先を鋭く振り上げた。すると壁の一部は両開きの扉として〈展開エボリューション〉し、ミグに道をゆずる。

 外はやけに息苦しかった。ミグはのどにひりつく痛みを覚えて瞬時に呼吸を止める。

 目を凝らしてみればあたりに降る雪はうっすら紫色を帯びていた。五芒星の光に触れて焼けるように消えていくこれは魔法だ。毒竜が放ったものに違いない。

 ミグはドラゴンの背上にいるノインに目を向ける。その手には赤みがかった紫色の刃が両端についた両剣が握られていた。


「ノイン、きみがまさかドラゴンと契約した竜の子だったなんてね。どうりで魔弾が効かないわけだ。テッサとヴィンになにをしたの」


 言いながらミグは首筋を軽く叩いた。そこに〈衝撃の膜(インパクト・スキン)〉の魔法陣が描かれ、ミグの肌を見えない膜が包む。触れるものは弾かれる防御魔法だ。


「きみの仲間には極上の毒をたっぷりと贈らせてもらった」


 桃色のドラゴンに跨がったノインは、転がしておいたテッサとヴィンを竜に拾わせる。ふたりの頬はすでに紫紺の変色がはじまっていた。


「三十分じっくりと骨の随まで苦しみながら腐らせてやろう」

「お父さんもうやめて! テッサおねえちゃんたちにひどいことしないで……!」


 その時ノインの影で怯えていたナキが父の腕に掴みかかった。しかしノインは鋭く振り払って拒み、その勢いに弾かれた小さな頭を片腕で掴み上げる。


「黙れ。お前はそこで大人しくしていろ」


 恐怖に染まった悲鳴とともにナキの体が投げ飛ばされる。ミグはすかさず〈反射壁リフレクト〉のやわらかい壁で受けとめ、そのままナキを半円の中に保護した。


「ミグ! けほっ、俺も戦う!」


 上空の強い風に白のローブを踊らせ、〈五聖塔ルクス・ペンタグラム〉の扉からひつじ頭を出したシェラを、ミグは急いで引き上げた。

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