表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第7章 反撃
321/352

321

「やる」

――即決だな。

「生きていればなんとかなる」


 くつくつと笑い声が体中に響いた時、ミグは胸に熱を感じた。見下ろした地面から一気に雪が溶け消え、見たこともない赤い魔法陣が現れる。

 それは水が土に染み込むようにミグの肌に吸い上げられていった。手足からひざ、肩、腹から胸へと魔法陣に飲まれたところから熱に焼かれる。

 思わず仰け反りうめき声をもらしたあご先から、大粒の汗が滴った。

 次にミグを襲ったのは浮遊感だ。体がひとりでに起き上がり、地面から離れていく。視界に映る足先に違和感があった。

 赤い光沢を放つ結晶が岩石と混ざり合いながら両足を覆っていく。それは太ももまで迫り、爪先からナイフのような四本爪を生やして止まった。

 気づけば両手も二の腕まで結晶と岩の鎧に包まれている。なにが起きているのやら、自分の体をあちこち見ているうちに腰から胸をなにかに挟まれた。

 見るとあばら骨のような結晶が背中から回されている。まさかと思って背中に手をやると脊柱せきちゅうが連なり、その先からはしっぽまで垂れていた。

 結晶と結晶が魔力で結びついて、左右に揺れるとカタカタ鳴る。しっぽは薄気味悪いことにミグの意思に従っていた。


「これじゃいよいよ怪物だよ」


 思わず頭を抱えたミグの手は、硬いものにぶつかって阻まれた。

 うそでしょ。

 おそるおそる手を伸ばすと耳の上から角が生えている。滑らかな手触りからたぶん赤い結晶だ。かなり太くて、手を目一杯広げても指先が届かない。

 駆逐砲を運んできた黒牛の横まっすぐに生えた角と似ている。そう思った時には理解の限界だった。


「説明求む!」

『今できる最大限の顕現化だ。地下でも少しやってたんだな』


 胸の奥底からではなくミグの口を借りて喋る魔石に、強烈なムズがゆさを覚えた。だがそれだけ今の状態は、ミグと〈名もなき石〉の同調が高まっているというのも感じる。

 ミグの手足は間違いなくミグの支配下にあった。それだけでなく魔石からあふれる無尽蔵の魔力も、太古からの知識も、淀みなくミグの中へ流れ込んでくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ