表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第7章 反撃
310/352

310

 テッサ、警備兵ふたり、そして民間の操縦士と誰も欠けていないことに息をつく。最後に、後方を気にしながら合流したルンは「〈防護壁シールド〉で時間稼ぎしたわ」と告げた。うなずき返しつつ、ヴィンは手すりから下層を覗き込む。あたりに吹く風はやんでいた。


「吹き抜けになっている下は通気孔が集まっている。稼働中は熱を持つ動力装置を冷却するためだ。そのあなを使って、ここからはナキを探す組とおとり組に分かれる。姫さん、おじょうちゃんはどこにいると思う?」


 テッサはあごに指をかけ視線を下げたが、すぐに確信を持った声で言った。


「ナキさんはきっとお父様といっしょにいたいはずです」

「よし。操舵室で決まりだな。前方、最上部だ。姫さんと俺で行くべきだと思うが、そっちにおとりを任せてもいいか?」

「問題ないわ」


 ルンはロングブーツのヒールをツカツカと鳴らしながら動力装置に歩み寄った。ガラスを炎の矢で砕き、特大魔石に触れたかと思うとでこぼこしたその表面に口づける。バトルロイヤルでミグの額にキスした時と同じように、魔力の流れるざわめきをヴィンは感じた。

 だが今回はどうやら魔石から魔力を吸い取ったらしい。長いまつげをふわりとはためかせ、ルンは満足げに唇をなめた。


「私たちが行ってもナキちゃんは怖がるだけだろうし。中央あたりで好きに暴れさせてもらうわ。救出したらすぐこっちに来なさい。ドラゴンに変身して脱出させてあげる」


 警備兵と操縦士にも目配せしてうなずき合うルンに、テッサは呼びかけながら勢いよく頭を下げた。


「あの、ありがとうございます……!」


 それは感謝だけでなく、危険に巻き込んだ申し訳ない思いもにじんだ声だった。そして、深々と沈んだ背中にはきっとナキのことともうひとつ、ミグを懸念する思いも負っているのだろう。

 すべてを達観したような静かな眼差しをしていたホッパーと違い、ルンのミグを見る目はヴィンにも複雑に映った。ルンは少なからずミグの存在に迷いを抱いている者のひとりだ。それはミグとディレットをいっしょに映した時、より濃く歪に浮き上がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ