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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第7章 反撃
304/352

304

「〈飛魚の羽衣(プワソン・プリュム)〉!」


 前方の宙に描いた魔法陣を潜り抜ける。船底の砲手から報告を受けていたのだろう、魔銃を抱えてなだれ込んできた帝国兵たちをテッサは中空で身をひねりながら数えた。

 まずは六人。囲える。


「〈時雨しぐれ〉」


 すばやく眼下に向かって描いた魔法陣をひと蹴りし、宙返りする。テッサの足先が触れたところから一滴のしずくがぽちゃんと降り、帝国兵たちの足元にも同じ魔法陣が広がった。テッサは羽衣が生み出す浮力の許す限り、手前の魔法陣を斬りつけて音もなく着地する。

 剣をさやに収めた瞬間、敵兵たちは一気に放たれた斬撃の雨に刻まれ沈んだ。


「テッサ様!」


 警備兵の叫び声を瞬時に理解してテッサは身を引く。その鼻先を弾丸がかすめていき、通路に再び集まりつつあった帝国兵を押し返した。それにつづく一陣の紫風がテッサの髪を揺らしていく。しなやかな四肢を持ったヒョウ、いやあれは変身したルンだ。


「まずは動力室を叩く! 下層中央部だ。このまま進め!」


 魔銃に持ち替えた警備兵ふたりと操縦士ひとりとともに、剣を携えて船から飛び降りたヴィンをテッサは振り返った。


「それでは墜ちるのではありませんか!?」

「どうせ予備くらい持ってるだろ。一時的でも照明魔灯が落ちれば動きやすくなる」


 言いながらも足を止めず進むヴィンに、テッサも駆け出そうとした時だった。

 ひしゃげた格納庫扉の外が真っ白に塗り潰される。すべての喧騒を掻き消して、巨大な鐘が狂い振り乱れるかのような音の爆発がした。せつな艦内の照明魔灯がちかちか明滅する。

 これは〈五聖塔ルクス・ペンタグラム〉が攻撃を受けている音だ。ベガ国の守りも砲撃や浮島と衝突した時、かん高く耳につく音を立てていた。

 ミグが、攻撃されている。ノインは学生魔導師たちの相手よりも、〈五聖塔ルクス・ペンタグラム〉の破壊を優先したのだろう。

 主砲を受けとめたミグにどれくらいの影響が出ているのか。親友はあと何発耐えられる?

 わかっている。ミグのためにも振り返ってはいけない。

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