表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第7章 反撃
298/352

298

 南区を覆う見たこともない戦艦と大人たちのただならぬ雰囲気に、子どもながら居ても立ってもいられなくなったのだろう。ただでさえ彼らのそばには、妹同然にかわいがっていたナキの姿が何週間も前からなくなっていた。衝動とも言うべき不安に突き動かされても仕方ない。


「ディレット様、私からもお願いします。ナキさんは父親に縛られているんです。助け出すことで恨まれても私は、あの子を犠牲には……」


 沈黙を破ったのはテッサだった。ひかえめな声で呼びかける親友はナキの複雑な心も、この状況でひとりの少女を救い出すことがどれほど困難で危険かもよくわかっていた。

 ディレットは手でテッサの言葉のつづきを制する。それは否定の仕草だとミグは思った。しかしディレットが口にしたのは地下アンダーを作った先人の思いだった。


「……自分らしくいられる場所。初代首長ハットリは国をまとめる立場になっても、傭兵の自由気ままな精神を愛していた。地下アンダーはハットリにとって傭兵である自分の居場所だったんだ」

「居場所……」


 思わずつぶやいたミグにうなずいたディレットは、テッサをしかと見据えた。


「自由の象徴でもあるんだよ地下アンダーは。いや、この国そのものだ。欲しいもんは誰の顔色もうかがわずてめえの力で勝ち取ればいい。俺はそんな国の首長だ。ディレットもレゾンも俺が欲しかったから手に入れた。姫サマがナキを助けたいと言っても俺は止めないぜ。ただし、自由っつうのはてめえのケツをてめえで拭けるやつの特権だ。相応の覚悟がいる」


 テッサは胸元の服を握り締めてうつむいた。ミグには親友の気持ちが痛いほどわかる。ナキの救出を決めたことで周囲にかける負担を思って、あと一歩わがままになりきれずにいる。

 そんな親友だから愛しいと思った。迷う理由なんかない。


「私がいっしょに行くよ、テッサ!」

「お前は魔力切れだろうが。俺が行く」


 身を乗り出したところをヴィンに押し退けられてミグはひっくり返った。


「だいじょうぶだよ! ディレット、良質な魔石くらいいっぱいあるんでしょ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ