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「ディレット……ノーブル……」
日の光の下で見るその男の長い髪は、雪に溶けるような白だった。ネイルと同じ黒いアイシャドウで縁取られた目は、鉄錆色に輝く。素肌をさらした上半身にコートをかけただけの出で立ちで、ディレットは少し寒そうに首をすくめてみせた。
「言ったろ、姫サマ。この国は傭兵の成り上がりだって。まともなやつなんていねえのさ」
なあ、と話を振られた痩身のゲームマスター・ノーブルは、のんきにベレー帽の位置を直して首をひねる。そこへルンの後ろから進み出てきた少年が、少し恥ずかしそうに告白した。
「俺はなにも知らなかったよ」
「シェラ」
優等生の白制服を着た心やさしい隣人に、ミグは親愛と感謝を込めて笑いかけた。
「……地下は一応十八歳未満の未成年立ち入り禁止の上に、移民も増えてますからまともなやつもいると思います」
明らかにシェラを見てから答えたノーブルの頭を、ディレットはつまらなそうに軽くはたいた。




