表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第6章 居場所
277/352

277

 ヴォルの合図で兵士のひとりが壁際のスイッチに着き、もうひとりが剣先をミグに突きつける。「おい」とヴィンが上げた抗議の声は、目も向けずに「うるさいですねえ」と苛立ったヴォルに遮られる。


「レゾン様のところにお連れするだけです。お互い無駄な時間と労力をかけないために抵抗はしやがらないでください」


 〈六重セクステット防護壁シールド〉の前に歩み寄りながら、ヴォルは片手を振って剣を構えた兵士を下がらせた。圧迫感が少し薄れて、ミグは自然と肩に入っていた力を抜く。

 カチリとつまみを操作する音とともにオレンジ色の壁は消えた。これも魔動機だったのだなとミグは思う。良質な魔石がいくつも採れるリゲル国だからこその〈六重セクステット〉という威力だろう。

 ベッドに腰かけるミグにヴォルはためらいなく近づいた。片足にはめられた足枷も魔力を封じる断魔鉱製とはいえ、その大胆さにはミグのほうが驚かされる。ヴォルは持ち上げさせたミグの両手首に、こちらも薄朱色に鈍く光る枷をかけた。


「ちょっと重くなりやがりますよ」


 質量が、という話ではなかった。片手に取りつけられた時点で枷の重さは感じていたはずなのに、もう片方の半月状の枷の噛み合わせがミグの手首を締めつけて留まった瞬間、上半身が折れた。

 重いというよりは衝撃に近かった。誰かに硬いもので後頭部を殴打されたように意識が揺さぶられる。

 これが魔力の流れを絶たれた感覚か。慌てて駆け寄ってきたテッサにも影響が出ることを恐れて、とっさに触っちゃダメと叫んだ。しかし重苦しさはヴォルが鍵で足枷を外したことでだいぶ軽減された。ミグは思わず深い息をつく。

 ふたつの相乗効果か断魔鉱の含有率の関係かわかりかねるが、改めてとんでもない鉱石だと思い知る。魔力の流れは血液と同じ、どんな生物の体にも巡りその生命活動を助けている。常人ならおそらく重い倦怠感で済むのだろうが、生命維持を魔石の化身〈名もなき石〉に完全依存しているミグにとっては致命的効果だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ