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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第6章 居場所
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 この地下にいても感じられるほどの音と震動は、崖崩れが起きた程度のものではない。陸が、リゲル国を支える浮遊大陸全土が揺れている。次の瞬間、悲鳴のような警備隊総長の報告が空間をつんざいた。


『魔石鉱山山頂に砲撃を確認! 鉱山山頂に砲撃を確認! すさまじい爆煙で目視はできませんが第一聖塔の魔力が断絶しました……!』

「バカな……。魔力波感知システムに反応は」


 あえぐような声で尋ねるレゾンに、丸型の魔力波観測計器を見つめるヴォルが淡々と返す。


「ありません。今の砲撃のみです」

妨波ステルス戦艦だと!? 帝国の船にそんな技術はなかっただろうが!」

「一番嫌な飛空艇ふねを隠し持ってやがりましたね。我が国に欲しいくらいです」


 落ち着き払っているように見えるヴォルだが、ミグは彼の後ろ手に握り締めた拳がギリギリと震えていることに気がついた。と、次の瞬間、石壁を殴打する激しい音が爆ぜる。えぐるように壁にすりつけた拳の横で、黒髪の隙間から歯を食い縛るレゾンの横顔が垣間見えた。


「行くぞ」


 白のグローブを赤く染めるほどの激情を抑えつけて、レゾンは階段を駆け上がっていく。その背を追うヴォルの瞳もまた静かな怒りと使命に研ぎ澄まされていた。

 残されたミグ、テッサ、ヴィン、そして幼いナキですら言葉なく立ち尽くす。




 まもなく、〈五聖塔ルクス・ペンタグラム〉の一塔を破壊し防御の術を奪い、南区魔法陣学校に主砲を向けた戦艦から声明が出された。

 プロキオン帝国第九艦隊将軍ノインと名乗った男の声は、青灰色の船体に濃い霧を従えたその戦艦のように冷たくおどろおどろしく、リゲル国の空に響き渡る。

 ノインは識別番号一三九と娘ナキの引き渡しを要求。三十分以内にこれが呑まれなかった場合は、実力行使に出ると告げた。




 地下独房の扉が開く音にミグは顔を上げた。そこには警備兵をふたり連れたヴォルが立っていた。グローブをはめた手には鎖で繋がった手枷を持っている。

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