表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第6章 居場所
268/352

268

「ばか……っ。こんなにやせて……。ちゃんとごはん食べないとダメでしょ……!」


 壁についた手はひと回り細くなったようで、骨が目立ち少しみすぼらしかった。どうやらとても長く寝入っていたらしいと実感する。だけど心配し怒るテッサの声はこの上なくやさしく、涙が熱を帯びるほど心地よかった。

 しかしにわかにミグは怖くなった。テッサは呆れているだろうか。テッサの友だちミグという存在は、今までの影が残らないほど変わってしまった。憎き帝国の人造魔人。それはもう人とは呼べない。そばにいるだけでどんな目で見られ、どんな災いが降りかかるだろう。


「テッサ、ごめん私……。心臓ないんだって……魔石で動いてるの……。ゼクストを殺して世界中から怖がられてる。私も、自分が怖い……」

「ミグは私の親友だよ」


 息をするのも忘れ、そのおだやかな声に聞き入った。白魚のようにしなやかで白い手が〈防護壁シールド〉ごとミグの頬をそっと包む。


「ミグはいつだって私を全力で守ってくれた。ベガ国の時も、アンダー・ゲームの時も。それだけじゃない。私の弱さも醜さも全部受けとめて『それが私の親友テッサ』だって言ってくれた」


 ひとつはなをすすり、涙を拭った手でテッサは肩の髪を払う。


「心臓はなくても心はあるわ。ちょっとお金にうるさくて黒髪を地味だと気にしてて消極的なところもあるけれど、誰かを守る時は迷わない。ミグのやさしい心は私がわかってる。今度は私がミグを守ってみせるから!」


 嗚咽ばかりがのどを突いて使い物にならない口を押さえ、ミグはただ震えた。このやさしさになんのためらいもなく甘えられた日々が今は遠く感じる。もどかしそうに頬のあたりをなでてくれるテッサの手は、触れていないのにとても暖かい。

 それと同時に、壁がある安堵をどこかで感じていた。

 その時、視界からそっと身を引こうとする影があった。「ヴィン」ミグは不安と焦りを乗せて呼び止める。気を失う前、ヴィンは傷つけたことも責めず絶望に染まるミグの言葉を否定してくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ